ボルネオール(読み)ぼるねおーる(その他表記)borneol

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ボルネオール」の意味・わかりやすい解説

ボルネオール
ぼるねおーる
borneol

モノテルペンアルコールの一つ竜脳(りゅうのう)、ボルネオ樟脳(しょうのう)ともいわれ、竜脳油、ローズマリー油ラベンダー油シトロネラ油など多くの精油中に含まれる。ボルネオールは不斉炭素原子をもっているので3種の光学異性体が存在し、d-体はリュウノウジュ(竜脳樹)より得られ、l-体は中国産竜脳草より得られる。従来は、天然樟脳を原料として製造したのでd-体が主であったが、合成樟脳を原料とし、dl-体(ラセミ体)も得られるようになった。白色板状結晶であり、古くから薫香、墨の香料香粧品、せっけん香料に使用されている。

[佐藤菊正]


ボルネオール(データノート)
ぼるねおーるでーたのーと

d-ボルネオール

 分子式 C10H18O
 分子量 154.25
 融点  d体 205℃
     l体 204℃
     dl体 201℃
 引火点 66℃

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化学辞典 第2版 「ボルネオール」の解説

ボルネオール
ボルネオール
borneol

1,7,7-trimethylbicyclo[2.2.1]heptan-2-ol.C10H18O(154.25).ボルニルアルコールともいう.二環式モノテルペンアルコール.ボルネオやスマトラに産生する竜脳樹Dryobalanops camphoraから右旋性の(1R,2S)-ボルネオール(竜脳)が得られ,台湾,マレー半島などに産生するタカサゴギクBlumea balsamiferaからは,竜脳の対掌体である左旋性の(1S,2R)-ボルネオール(白手竜脳)が得られる.(1R,2S)-ボルネオールを酸化するとd-カンファーを生じる.d-カンファーをナトリウムエタノール還元すると,(1R,2S)-ボルネオールとヒドロキシ基に関するエピマー,(1R,2R)-イソボルネオールを生じる.(1R,2S)-ボルネオールは融点208 ℃,沸点212 ℃.+37.7°(エタノール).エタノールに易溶,有機溶媒に可溶,水に不溶.(1R,2R)-イソボルネオールは融点212 ℃.-32.3°(メタノール).各種化粧品,香粧品,口腔剤,医薬品の付香料,殺菌消毒剤に用いられる.[CAS 464-43-7:(1R,2S)-ボルネオール]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「ボルネオール」の意味・わかりやすい解説

ボルネオール
borneol

二環式モノテルペンアルコールの一つ。リュウノウ(竜脳),ボルネオショウノウともいう。ショウノウ様の芳香をもつ葉状または板状晶の白色固体。昇華性が強い。融点202~203℃,沸点214℃。水に難溶,エーテル,アルコールに易溶。イソボルネオール(融点212℃)はボルネオールの水酸基に関する立体異性体である。ボルネオールには,d-,l-,dl-の光学異性体が存在するが,天然に存在するのはd-体とl-体である。d-ボルネオール([α]=+38.1°)は竜脳樹Dryobalanops aromaticaをはじめ種々の精油中に,l-ボルネオール([α]=-37°)はリュウノウギクBlumea balsamiferaの精油などに,イソボルネオールはアリサンヒノキなどの木精油wood terpentineに含まれている。ショウノウを接触還元,LiAlH4などで還元するとボルネオール,イソボルネオールの混合物が得られる。ラベンダーやかんきつ系の香粧品,医薬品に用いられる。古くから薫香料として有名で,墨の付香料とされた。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ボルネオール」の意味・わかりやすい解説

ボルネオール
borneol

化学式 C10H18O 。竜脳ともいう。モノテルペンアルコールに属する化合物で,D体とL体とがあり,特有の芳香をもっている。D体はフタバガキ科のリュウノウジュなどの精油中に存在し,石油エーテルから再結晶して昇華性の無色板状晶として得られる。沸点 212℃,水に不溶。L体は六角板状晶,融点 204℃。キク科のタカサゴギクの精油中に存在する。また DL体はマツ科植物などの精油中に存在し,ショウノウの還元によって合成される。融点 206~207℃。香料原料として重要である。

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百科事典マイペディア 「ボルネオール」の意味・わかりやすい解説

ボルネオール

化学式はC1(/0)H18O。リュウノウ(竜脳),ボルネオショウノウとも。モノテルペンアルコールの一つ。d‐,l‐の光学異性体がある。前者はフタバガキ科植物の精油,ローズマリー油,ラベンダー油中に,後者はマツ科植物などの精油中に存在する。いずれも樟脳(しょうのう)に似た芳香をもつ昇華性の無色結晶で,融点202℃。そのまままたは酢酸エステルとして香粧品,口中清涼剤,墨の香料などに用いられる。樟脳の還元などによって合成。

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栄養・生化学辞典 「ボルネオール」の解説

ボルネオール

 着香剤として使われる食品添加物の一つ.コショウのような香りをもつ.コリアンダー,ショウガ油,ライム油,ローズマリーなどにも含まれる.

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世界大百科事典(旧版)内のボルネオールの言及

【リュウノウジュ(竜脳樹)】より

…フタバガキ科の常緑高木で,樹高55~65m,直径1~3mに達する。樹体全体に化学構造がショウノウに近似した,芳香の高いリュウノウ(竜脳,ボルネオール)を含む。樹幹は通直の円筒状で,枝下高が高く,板根(ばんこん)がよく発達する。…

※「ボルネオール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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