ジルカロイ(その他表記)Zircaloy

デジタル大辞泉 「ジルカロイ」の意味・読み・例文・類語

ジルカロイ(zircaloy)

ジルコニウム合金の一。原子炉燃料被覆管炉心材料用として米国で1952年に開発

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改訂新版 世界大百科事典 「ジルカロイ」の意味・わかりやすい解説

ジルカロイ
Zircaloy

ジルコニウムZrの合金。ZrのほかにSn 1.5%,Fe 0.12%,Ni 0.05%,Cr 0.1%のジルカロイ-2と,Sn 1.5%,Fe 0.2%,Cr 0.1%のジルカロイ-4の2種の実用合金がある(以上重量%)。発電用原子炉の沸騰水型炉は燃料被覆管にジルカロイ-2,燃料集合体にかぶせるチャンネル・ボックスにジルカロイ-4を使用している。加圧水型炉では燃料被覆管にジルカロイ-4を使用している。この合金は熱中性子吸収が小さいことが特徴で,さらに,高温水に対する耐食性がよいこと,適度の強さと延性をもち,加工性もよいことから,上記のように熱中性子を利用する原子炉の炉心部で使用されている。その歴史はアメリカ原子力潜水艦の炉心材料として開発したのにはじまる。ジルカロイ-2とジルカイロ-4の性質はきわめて似ているが,高温水で腐食されたとき発生する水素の合金への吸収割合はジルカロイ-4が少し少ない。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ジルカロイ」の意味・わかりやすい解説

ジルカロイ
zircaloy

軽水型動力用原子炉の燃料被覆材として開発されたジルコニウム-スズ系合金。数種あるが,沸騰水型原子炉の燃料被覆管として用いられているジルカロイは,ジルコニウムにスズ約 1.5%,鉄 0.12%,クロム 0.1%,ニッケル 0.05%が添加されており,ジルカロイ-4の組成はジルコニウムにスズ 1.5%,鉄 0.15%,クロム 0.10%が添加されている。これは窒素によるジルコニウムの腐食を抑えるためである。原料ジルコニウムはリアクター級と呼ばれる高純度のもので,特にハフニウムの存在を嫌う。ジルコニウムが原子炉材に使われるのは熱中性子吸収が少いためであるのに,ハフニウムはそれが大きいからである。それでジルコニウム製錬 (→クロル法 ) の前段階でハフニウムは溶媒抽出法,イオン交換法などにより徹底的に除去される。最近では,より高い特性を目指し,高燃焼度用の新合金の開発が進められている。

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化学辞典 第2版 「ジルカロイ」の解説

ジルカロイ
ジルカロイ
zircaloy

軽水炉の燃料被覆用に使われるジルコニウム合金.ジルコニウムは熱中性子吸収断面積が小さく,原子炉材料として適している.しかし,高温水中で腐食を受ける傾向があり,また窒素との反応性も強く,含有窒素量が40 ppm 以上になると耐食性が低下する.そこで開発されたのが,Zr-Sn合金のジルカロイである.窒素の害を除くには,スズを約1.5質量% 添加する.ジルカロイには4種類あり,当初ジルカロイ-1ができたが,その後スズを減じ,鉄,ニッケル,クロムを加えたジルカロイ-2ができ,高温水に対する耐食性がよくなった.その後,成形加工性をよくするためスズを減じて改良したジルカロイ-3ができた.また,水素吸収の問題を解決するため,ニッケルを除いて鉄を増加したジルカロイ-4ができた.現在,実用されているのはジルカロイ-2と4である.

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジルカロイ」の意味・わかりやすい解説

ジルカロイ
じるかろい
zircaloy

核分裂で出た熱を軽水(H2O)で運び出す型の動力源に使われる原子炉(軽水炉)の二酸化ウラン燃料を包む材料として、1952年にアメリカで開発されたジルコニウムの合金。1.5%のスズのほかに鉄、クロムを加え、さらにニッケルを入れるもの(ジルカロイ‐2)と、入れずに鉄を50%増にしたもの(ジルカロイ‐4)の2種が燃料被覆材として実用されている。軽水炉のほか重水炉にも用いられている。

[三島良續]

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百科事典マイペディア 「ジルカロイ」の意味・わかりやすい解説

ジルカロイ

主として原子炉の燃料被覆に使われるジルコニウム合金。熱中性子の吸収が小さく,高温の水・水蒸気に対する耐食性が大。ジルカロイ-2(ジルコニウム以外の成分が重量%でスズ1.5%,鉄0.12%,ニッケル0.05%,クロム0.1%)とジルカロイ-4(スズ1.5%,鉄0.2%,クロム0.1%)の2種が実用。

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世界大百科事典(旧版)内のジルカロイの言及

【核燃料】より

…通常の形態は,核燃料物質を金属または酸化物か炭化物の固体として燃料の心材とし,核分裂生成物が冷却材にもれることを防ぐために,その外側を金属や炭素で被覆したものである。 軽水炉の燃料は濃縮ウランの熱中性子による核分裂を利用するもので,ウランを酸化物UO2の円柱状の焼結ペレットとし,これをジルカロイというジルコニウム合金の被覆管に密封している。この形式のものは他の動力炉でも使用されており,日本で開発した重水炉の燃料も同様である。…

【原子炉材料】より

…マグネシウムの合金であるマグノックスは,金属ウラン燃料の被覆材として炭酸ガス冷却炉に使用されている。軽水炉ではジルコニウムの合金であるジルカロイが,高温の水に対する耐食性も良く広く使われている。天然のジルコニウムにはハフニウムが含まれていて,これの中性子吸収がきわめて大きいので,これを分離除去したものを使用する。…

※「ジルカロイ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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