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律法 りっぽうTorah; the Law of Moses

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

律法
りっぽう
Torah; the Law of Moses

ヘブライ語で,教える,道を示すなどを意味する語に由来する術語で,ヤハウェ神がイスラエルの民 (そして全人類) に啓示したとされる宗教的,儀式的かつ倫理的命令,法をさし,神意の表現であると信じられている。伝承によれば,モーセがシナイ山上で神から授けられたというが,その実際の内容については一致した見解はなく,ときに,いわゆるモーセの十戒モーセ五書 (書かれた律法) ,あるいは旧約聖書全体をもさし,さらにはモーセは書かれた物のほかに,口頭でも啓示を受けたとの説に立ち,この口伝を収集したいわゆるミシュナ (口伝律法) をも律法に含める説もある。キリスト教でも律法を神の隣人への愛の法として基本的に受入れるが,律法はキリストによって完成されたとしている。

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百科事典マイペディアの解説

律法【りっぽう】

狭義に旧約聖書の最後の五書(モーセ五書)をいい,ヘブライ語でトーラーTorah。また五書に含まれる種々の法的規定や祭司,預言者らが示した教えをも指し,イスラエルの民が服すべきものとされた。
→関連項目戒律

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世界大百科事典 第2版の解説

りっぽう【律法 Law】

キリスト教倫理学および聖書学ではこの語は多義的に用いられる。前者で最も広義に用いられる場合は,〈福音に対立する〉否定的な意味で用いられ,ヨーロッパ,アメリカではルター派の系統にその傾向が強くみられる。カルバン派では律法の第三用法と称して積極的に位置づけ,意味づける。また,福音=新約聖書と対立させ,律法=旧約聖書の意味に用いる場合もある。より狭義に用いる場合は,旧約聖書内の〈律法〉,つまり旧約聖書の最初の五書(モーセ五書)の別名として,とくにユダヤ教で用いられ,〈トーラーTorah〉ともいわれる。

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大辞林 第三版の解説

りっぽう【律法】

〔歴史的仮名遣い「りっぽふ」〕 〘仏〙 「 戒律かいりつ 」に同じ。
〔歴史的仮名遣い「りっぱふ」〕 神により祭司や預言者を通して与えられる宗教や倫理生活上の規範。ユダヤ教のトーラーやイスラム教のシャリーアなど。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

律法
りっぽう
trhヘブライ語
law英語

「モーセはシナイで律法(トーラー)を受けた」(ミシュナ・アボット1―1)はユダヤ教の律法に関する重要な章句であるが、ここでいう律法は「創世記」「出エジプト記」「レビ記」「民数記」「申命記」の五書のほかに、のちにミシュナに集大成された口伝律法をも含むとするのがユダヤ教の伝統的な解釈である。
 律法と訳されるトーラーは「教え、指示」を意味する語で、内容的には宗教的法規、道徳的規範、社会的、政治的倫理のすべてを包括している。「申命記」7章6節以下によれば、イスラエルの民は神の聖なる民であり、神の慈しみによって諸民族のなかからとくに選び出された。それゆえ、神を愛しその命令を守る者を、子々孫々に至るまで神は守護する。したがって命令と定めと掟(おきて)を守って行わねばならない、という。律法は神と民とのこうした契約関係を背景にして存在しており、神の聖性に対応して聖なる民となるための道である。
 また律法の道徳面には正義と公正という二つの基本的原理がうかがえる。所有、生存、居住、労働、人権等の基本的権利が主張されるとともに、生活手段や庇護(ひご)者をもたぬ未亡人および孤児、多くは避難民である他国人、さらには貧困者など、社会的弱者に対する特別な配慮が義務として要請されている。たとえば、畑の刈り入れに際しては隅の一部を残し、落ち穂はそのままに放置して、貧者や避難民の自由に任す。日雇人の日当を遅配させない。貧窮者には無利子で金を貸す。未亡人や孤児を困らせるようなことをしてはならない、など。ここには「あなた自身のようにあなたの隣人を愛しなさい。わたしは主である」(「レビ記」19章18)にみられるように、単に社会の秩序維持を目的とする規範を超えた宗教思想が根底に横たわっている。
 時代による社会の変質は、成文律法の適用に細則と新解釈を必要とした。これらが口伝律法を生み出していくことになった。[石川耕一郎]

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世界大百科事典内の律法の言及

【カバラ】より

… 伝説によるとアブラハムがメルキゼデクから天界の秘密を伝授されたという。またモーセは神の啓示を受けたのち,それを〈律法(トーラー)〉に記したが,どうしても文字では書き表せない部分をカバラとして後世に伝えたという。最古のカバラは〈神の玉座もしくは戦車(メルカーバー)〉として知られている。…

【神】より

…【山折 哲雄】
【ヘブライズムの神】
 古代イスラエル宗教,ユダヤ教,キリスト教,さらにイスラム教の系譜は,ふつう(唯)一神教といわれる。経典では旧約聖書(ユダヤ教では〈律法・預言者・諸書〉略してタナハTanakh),新約聖書,さらにコーランに示される。ヘブライズムの唯一神の特徴は,ギリシア思想における哲学的・思弁的宇宙原理や原始的自然宗教における畏怖の対象と異なるとともに,直接の環境世界をなす古代オリエント宗教の多神教における宇宙論的至高神とも異なり,特定の人間・社会に対する〈かかわり〉と〈働き〉の中に見られる。…

【タルムード】より

…後4世紀末に〈エルサレム・タルムードJerusalem Talmud〉(別名〈パレスティナ・タルムードPalestinian Talmud〉),その100年後に〈バビロニア・タルムードBabylonian Talmud〉が成立した。これら両タルムードは,200年ころ総主教ユダ(イェフダ)Judah ha‐Nasiが編纂したミシュナをめぐってユダヤ人律法学者が数百年間積み重ねた議論の集大成で,ヘブライ語で書かれている。事実,タルムードの本文には,ミシュナの各節と,それに関する学者たちの議論と解釈を記録したゲマラGemara(アラム語で原意は〈完結〉)が交互に配置されている。…

【パウロ】より


[生涯]
 イエスとほぼ同じころ,小アジア,キリキアの首都タルソ(タルソス)で,ユダヤ人の家庭に生まれた。律法に熱心なパリサイ派の一員として成人し,ユダヤ人でありながら律法をおろそかにするキリスト教徒を迫害したが,あるとき突然回心を体験し,それ以後とくに異邦人に福音を伝えるキリスト教の伝道者として活動した。当初はシリアのアンテオケ(アンティオキア)教会で伝道に従事し,いわゆるエルサレム会議(おそらく48年)ではアンテオケ教会の代表として,異邦人信徒に律法を守る義務を課そうとする動きに反対した。…

【パリサイ派】より

…その起源は前2世紀にさかのぼる。本来,平信徒の運動で,この派に属する律法学者が指導的な位置を占めた。口頭での父祖伝承をも含めて律法を日常生活の諸局面へ適合させるため〈合理化〉(M.ウェーバー)する一方,ダビデの家系のメシアの待望,復活信仰,最後の審判など旧約聖書の枠を超える教義も有した。…

【モーセ五書】より

…ギリシア語ペンタテウコスpentateuchos(〈五つの巻物〉の意)の訳であって,旧約聖書の最初の五つの書物,つまり《創世記》《出エジプト記》《レビ記》《民数記》《申命記》の総称。この呼称は後1世紀ごろから登場するが,ユダヤ教では〈律法(トーラー)〉と呼んだ。古代イスラエル民族の揺籃の時代を,天地創造の場面設定から説き起こし,世界と人類の諸問題を堕落物語,カインの兄弟殺し,ノアの洪水物語,バベルの塔建設による人類の傲慢などの神話,口碑を用いて明らかにし(《創世記》1~11),次いで,アブラハム,イサク,ヤコブというイスラエルの族長物語を置いて,この人類の悲劇性に対する答としての神による選びの使命を明らかにする(《創世記》12~50)。…

【ユダヤ教】より

…この契約に基づき,主はイスラエルの〈唯一の神〉,イスラエルは主の〈選民〉となった。〈シナイ契約〉を確認するために,モーセを仲保者として与えられた律法は,民族的・宗教的共同体として成立したイスラエルの生き方を決定する基本法となった。 前13世紀末に,イスラエル人はカナンに侵入して〈約束の地〉に定着したが,前1000年ころ,ユダ族出身のダビデが王となり,シリア・パレスティナ全域にまたがる大帝国を建設し,エルサレムを首都に定めた。…

※「律法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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