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経済学者。イタリアのトリノに生まれ,トリノ大学に学び,そこでグラムシを知り,生涯の友人の一人となる。青年時代,社会主義運動に携わったが,1925年にイタリア語で公表されたマーシャルの価格論に対する批判論文で高い評価を受け,27年ケインズによりケンブリッジ大学に招かれ,キングズ・カレッジからトリニティ・カレッジに移り,そこでフェローに選任された。マーシャル図書館の館長を長期間つとめる。彼は第1に,第2次大戦後公刊されたほぼ完全な《リカード全集》(1951-73)の編集者であり,現代のリカード研究の第一人者でもある。第2に,ケンブリッジ学派の不完全競争論の開拓者としての地位をかちえた。しかし,60年公刊の《商品による商品の生産》こそは,現代の厳密な分析用具によって構築された古典派経済学の核心部分の〈現代版〉で,同時に新古典派の価値と分配の理論の批判を意図したライフワークである。
執筆者:菱山 泉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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…投下労働価値論と関係する不変の価値尺度の問題はリカードの終生の問題であったが,21年の第3版では,その点が修正されるとともに,有名な〈機械について〉という第31章が付加された。彼の不変の価値尺度論は,今日P.スラッファの《商品による商品の生産》(1960)における〈標準商品〉論として新展開をみせている。本書は,1921年和田佐一郎,堀経夫の2抄訳が生まれ,28年小泉信三,堀経夫の2全訳が刊行された。…
…イギリスのM.ドッブやR.ミーク,アメリカのP.スウィージーといったすぐれたマルクス経済学者は例外的で,孤立的な点在にとどまっていた。しかしP.スラッファの《商品による商品の生産》(1960)に始まる新リカード学派の台頭による新古典派理論の威信の低下,南の諸国の急進的革命運動に理論的基礎を与えようとするA.G.フランクやS.アミンらの新従属学派(従属論)の登場,さらに社会思想や政治運動の内部に広がる欧米のマルクス・ルネサンスの波などを介して,1970年代以降欧米にマルクス経済学の再生運動が広がり,かなりの数のマルクス経済学者の層が形成され定着してきている。 その基礎理論における関心は,まず転化問題から価値論にむけられた。…
…またソローRobert Merton Solow(1924‐ )は,価格機構に導かれて生産における要素間の代替がスムーズに起こり,さらに貯蓄と投資の均等ももたらされるとする新古典派経済成長モデルを提示し,経済が自然的成長率経路へ安定的に収束する姿を描いてみせた(新古典派的成長理論)。 これに対して,J.ロビンソン,N.カルドア,P.スラッファ,L.パシネッティらのポスト・ケインズ派(ポスト・ケインジアン)は新古典派に対する強力な批判を展開した。彼らの批判は,異質資本財を集計した新古典派の資本の概念を否定し,それと労働とのなめらかな代替を仮定するマクロの生産関数を否定し,利子率と資本集約度との一元的関係を否定することに向けられた(資本論争)。…
※「スラッファ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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