高等植物の細胞壁の主構成成分であるセルロースの分解を触媒する酵素。セルロースのβ-1,4-グルコシド結合を加水分解して,グルコースやセロビオースなどの単糖を生成する。多くの生物に存在し,高等植物や,セルロース分解菌(アオカビ,コウジカビ,木材腐朽菌など),セルロース分解細菌などに含まれる。また,動物ではカタツムリやフナクイムシの消化液に含まれている。ウシなどの反芻(はんすう)類や,木材に穴をあける昆虫(シロアリなど)もセルロースを分解する能力をもっているが,この場合はそれらの動物の消化器官中にセルラーゼを分泌する微生物が多数共生していることによるものである。セルラーゼは,種類によって特異性の異なるものもあるが,一般に重金属や,セロビオース,グルコースなどで反応が阻害される。また,近年セルラーゼを使って植物細胞の細胞壁のみを取り除くこと(プロトプラスト化)が容易になり,植物細胞の培養に広く用いられる。
執筆者:柳田 充弘
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
セルロースのβ(ベータ)-1・4グリコシド結合を加水分解する酵素。カビ類、土壌細菌、酵母、軟体動物、高等植物などに広く存在する。セルロースに対する作用の仕方は一様ではなく、同一生物が生産するセルラーゼでも数種類あって、初めに大きく分解するセルラーゼが働き、ある程度セルロース分子を短くすると、また別のセルラーゼが働いてオリゴ糖やグルコースを生ずるというように互いに助け合って働いていると考えられる。カビや細菌などは菌体外にセルラーゼを分泌し、外界のセルロースを分解して菌体に取り入れやすくしたり、カタツムリなどの軟体動物では消化酵素として働いている。また、ウシなどの反芻(はんすう)動物では腸内細菌のセルラーゼの力を借りて、セルロースを分解している。
[伊藤菁莪]
EC 3.2.1.4.β-1,4-グルカングルカノヒドロラーゼともいう.セルロースのβ-1,4-グリコシド結合を加水分解し,おもにセロビオースを生成する酵素.高等植物の芽,かび,土壌細菌,軟体動物消化管に存在する.草食動物の消化は消化管に寄生する微生物のセルラーゼの作用による.Penicillium notatumから単離されるセルラーゼは分子量3.5×104,324個のアミノ酸よりなる一本鎖ポリペプチドで,酸性タンパク質である.[CAS 9012-54-8]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…微生物的分解は,生物によって作られたものは生物的に分解される。セルラーゼは有名なセルロース分解酵素である(後述)。酸加水分解は,ポリマー主鎖を構成する1位の炭素と酸素間のグリコシド結合は酸によって容易に切れて分解する。…
※「セルラーゼ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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