オランダの物理学者。ゼーラント州のゾンネメーレの生れ。デルフトで2年間の大学入学準備期間を過ごした後,1885年にライデン大学に進み,カメルリン・オンネスやH.A.ローレンツに学んだ。90年にローレンツの助手となり,カー効果の研究によって,92年にハーレムのオランダ科学協会から金メダルを授与され,また翌年には学位も得た。その後,シュトラスブルクのコールラウシュ研究所で半年間過ごし,戻ってからはライデン大学の私講師となった。96年から磁気光学の研究を開始し,電磁石の磁極間にナトリウム炎をおき,回折格子を使用してその発光を観測,その結果,スペクトル線の広がりを見いだした。翌年アムステルダム大学の講師になる一方,研究を継続し,スペクトル線の分岐を発見した。この発見は,放出される光の偏光状態に関するローレンツの電子論の諸帰結を確証しただけでなく,光を生ずる粒子,振動する粒子が負電荷をもつことをも示した。その後,この粒子の比電荷が,J.J.トムソンの陰極線粒子と同一であることを明らかにした。こうしたスペクトル線への磁場の影響はゼーマン効果と呼ばれ,1902年にはこれらの研究に対してノーベル物理学賞が贈られた。08年アムステルダム大学の正教授となり,その後35年間その座にあった。
執筆者:日野川 静枝
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…光源を磁場の中においたとき,原子のスペクトル線(発光線)が分裂する現象。1896年,P.ゼーマンがブンゼン炎中の食塩から発するナトリウムのD線が1T程度の磁場中で広がるのを観測したのが最初で,彼は,すぐ後に分解能を改良して発光線が実は数本に分裂していることを確認した。発光線の分裂は,初めH.A.ローレンツによって古典力学に基づいて説明されたが,完全な説明は量子力学によらねばならない。…
… 分光学の進歩とともに,吸収線による研究が進み,太陽大気中に存在する化学組成,温度,圧力,乱流運動などの知識が飛躍的に増えた。 96年オランダのP.ゼーマンは,光源を強い磁場の中におくと,その光源の発するスペクトル線は偏光状態の異なった成分に分かれ,1本の吸収線が波長の異なる線に分離すること(ゼーマン効果)を発見した。この分離が磁場の強さに比例するので,ゼーマン効果は天体の磁場を知る手段を与えた。…
※「ゼーマン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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