物質は原子によって構成され、原子相互間の結合は電子によって行われ、また、物質の性質は結合にあずかっている電子によって決定される。このような立場にたって、電子の性質、および電子の関与する物質の諸性質(物性)を調べる理論を電子論という。19世紀の終わりから20世紀の初めにかけて、物体中で電気を運ぶのは自由電子であるとして、電気伝導をはじめ諸物性を説明したのが、ドルーデとローレンツによる古典電子論である。その後、量子力学の発展に伴い、ゾンマーフェルトによって量子力学的電子論の基礎がつくられた。この理論では、電子は波動としてふるまい、その結果、電子のエネルギースペクトルに許容帯と禁止帯とが生まれる。これがバンド理論であり、物質に導体、半導体、絶縁体の違いが生ずる理由をよく説明することができる。
[野口精一郎]
有機電子論,有機電子説ともいう.有機化合物の電子密度や電子の動き方などによって,有機化合物の反応や性質を統一的に解釈しようとする理論.R. Robinson(ロビンソン)やC.K. Ingold(インゴルド)らによって1930年ごろにほぼまとめられた.共有結合電子対が一方の原子に偏って結合がきれる過程を含む反応をイオン的な反応といい,このような反応では,求電子試薬は電子密度の大きい反応中心を攻撃し,求核試薬は電子密度の小さい反応中心を攻撃すると考える.分子中の特定の原子または原子団は結合を分極する.この効果が反応中心にまで伝達されて,電子密度に影響する.これを置換基の電子効果という.反応中心の電子密度を小さくするような効果をもつ置換基を電子求引性基といい,電子密度を大きくするような効果をもつ置換基を電子供与性基という.また,電子効果がσ結合を介して反応中心に伝わる場合を誘起効果(I効果)といい,π共役電子を介して伝わる場合をメソメリー効果(M効果または共鳴効果)という.分極率への寄与が大きいπ電子は,試薬の接近によって原系よりも大きな電子効果を受ける.これは遷移状態で発現するメソメリー効果とみなされ,とくに,エレクトロメリー効果(E効果)とよばれる.一般に,化学反応の起こりやすさ(反応機構)を電子論で考える場合,エレクトロメリー効果にもとづいて得られる結論とメソメリー効果にもとづいて得られる結論とは,たいていの場合一致する.
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…マクスウェルの理論に欠けていた第2の点は,電荷や電流の本性は何かということである。これに答えようとしたのは,物質の電気的・磁気的性質を物質の原子的構造から説明することを目ざす,H.A.ローレンツの〈電子論〉であった。電子論では,仮説として,物質が正負の電荷をおびた微粒子からなるという考えを導入するが,真空放電の研究に続く陰極線の発見を経て,96年にローレンツおよびJ.J.トムソンが,それぞれゼーマン効果,陰極線粒子の比電荷の研究によって電子の存在を確認するにおよんで,電子論の基礎はひじょうに強固となった。…
…有機化合物の反応性や有機化学反応の経路を電子の状態や移動から説明する理論。単に電子論あるいは電子説ともいう。具体的には20世紀前半のイギリスの化学者ラップワースA.Lapworth,ロビンソンRobert Robinson(1886‐1975),インゴルドChristopher Kelk Ingold(1893‐1970)らの理論をいう。…
…また27年から5回連続してソルベー会議の議長を務めた。 科学上の業績は光学と電磁気学の分野,とくに両者を統一的に説明した電子論の形成にあった。J.C.マクスウェルは光の電磁波説を提唱し光学を電磁気学で説明する契機を作ったが,具体的な現象を説明できず,1880年代までは旧来の光学理論である光の弾性波動論が主流であった。…
※「電子論」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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