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タニシ Vivipariidae; river snail

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

タニシ
Vivipariidae; river snail

軟体動物門腹足綱タニシ科の淡水産巻貝の総称。殻は薄く,卵形または卵円形で層はふくらみ,殻表は黄緑色の殻皮でおおわれる。ふたは卵形で薄く,核は中央近くにある。雌雄異体卵胎生。雄の右触角は陰茎の働きをするために曲り,雌の輸卵管は育児嚢となってその中で数十個の子貝を哺育する。日本産は以下の4種。 (1) オオタニシ Cipangopaludina japonica 日本産のタニシでは最も大きく,殻高 6.5cm,殻径 4.6cmに達する。螺塔は円錐形状に高くなるが,螺層のふくらみは弱い。殻表は緑褐色で細い螺条があり,殻皮毛が生じている。本州から九州まで分布しており,北方型は体層の周縁に明らかな角があるためカクタニシと呼ばれる。 (2) マルタニシ C.chinensis malleata 殻高 6cm,殻径 4.4cm。螺層はよくふくらむ。肉は食用に供される。北海道から九州まで分布する。 (3) ナガタニシ Heterogen longispira 殻高 6cm,殻径 2.7cm。殻は高塔形で,殻頂は胎殻が大きい。ふたは赤褐色。肉は食用。琵琶湖に固有で,特に湖南部に多い。 (4) ヒメタニシ Sinotaia quadrata historica 殻高 3.5cm,殻径 2.3cmで最も小型。螺層はややふくらみ,殻表は平滑,または明らかな螺肋を生じる。ふたは紅褐色。本州から九州までと奄美群島に分布する。上記4種のうち,(1) ,(2) は北アメリカに移入されてすみついており,Japanese trap door snailとも呼ばれる。なおマメタニシはタニシ科には含まれない。

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栄養・生化学辞典の解説

タニシ

 タニシ類の淡水産巻貝.マルタニシCipangopaludina chinensis malleate],ヒメタニシ[Sinotais quadrata histricus]などを食用にする.

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食の医学館の解説

タニシ

《栄養と働き&調理のポイント》


 日本にはマルタニシ、オオタニシ、ヒメタニシナガタニシの4種類があり、水田や湖沼に生息します。
○栄養成分としての働き
 栄養で目を見張るのは、カルシウムがたっぷり含まれていること。カルシウムは骨を丈夫にするだけでなく、血液の凝固や精神の安定、筋肉の収縮をスムーズにする効果があります。
 ほかにビタミンB1やB2、ナイアシンも含有します。B1は炭水化物の糖質をエネルギーにかえるときに必要で、不足すると疲労物質がたまりやすくなります。
 したがって、疲労、ストレスの緩和に有効です。B2は成長をうながし、細胞の再生を助けるので、髪や皮膚をつくるサポートをするほか、疲れ目に効果があります。
 このほか、鉄や亜鉛(あえん)など、造血作用のあるミネラルも豊富に含まれています。
○漢方的な働き
 タニシは黄疸(おうだん)などの熱をとり、大小便の通じをよくするとされています。また、殻(から)も薬として活用しています。
 有名な処方に、心臓や腹痛の治療薬「水甲散(すいこうさん)」があります。
 調理の際には、真水に1~2晩つけておき、泥を吐(は)かせましょう。下煮をしてから、木の芽和え、酢味噌和え、味噌汁にするとおいしくいただけます。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

タニシ
たにし / 田螺
river snail

軟体動物門腹足綱タニシ科に属する巻き貝の総称。この科Viviparidaeの仲間は淡水産で、殻は通常螺塔(らとう)が高くなって膨らみ、体層が大きく丸い。殻表には暗緑褐色の殻皮をかぶる。蓋(ふた)は卵形、革質で黄褐色、核は中央内側寄りにある。雌雄異体で、雌は雄より大きく成長し、雄の右触角は陰茎の働きをする。胎生で、子貝は雌の体内で成育する。
 日本には次の4種があり、肉はいずれも食用となり、またコイの餌(えさ)や餌料(じりょう)にもされる。
 オオタニシCipangopaludina japonicaは、日本産のタニシではもっとも大きく、殻高70ミリメートル、殻径45ミリメートルに達し、螺塔は円錐(えんすい)形状に高まるがその膨らみは著しくない。殻表には細い螺条があって、そこに殻皮毛を生じる。蓋は褐色である。本州から九州に分布し、北アメリカにも広がっている。河川、湖沼にすむ。北方では体層の周縁に幼貝のように角(かど)があり、カクタニシとよばれる型となっている。
 マルタニシC. chinensis malleataは、殻高60ミリメートル、殻径44ミリメートルに達し、螺層はよく膨らんで、縫合は深い。殻口は広くて丸く、蓋は黄褐色。北海道から九州および朝鮮半島に分布し、オオタニシと同様に北アメリカで野生化している。おもに水田にすみ、冬季は乾田のくぼみで越冬する。中国に分布するものの亜種とされている。
 ナガタニシHeterogen longispiraは、殻高60ミリメートル、殻径27ミリメートルに達し、螺塔が細くて高く、螺層の膨らみは弱い。また胎児が大きく10ミリメートルに達し、初めは平巻き状であるが育った胎児は鼓形となる。蓋は赤褐色。琵琶(びわ)湖特産で、湖南部に多い。
 ヒメタニシSinotaia quadratus histricaは、殻高35ミリメートル、殻径23ミリメートルに達し、卵円錐形で螺層の膨らみは弱い。殻表は平滑であるが、螺状肋(ろく)を巡らすこともある。また、殻皮毛が生じる個体もある。蓋は紅褐色。本州から九州、奄美(あまみ)諸島にも分布し、やや汚れた池沼にすむ。この種も、中国に分布するものの亜種とされている。[奥谷喬司]

料理

身は特有のこりこりした歯ごたえがある。殻付きのものは真水につけて泥を吐かせ、ゆでてから針で身を取り出す。木の芽和(あ)え、みそ煮、ワケギとともに酢みそ和えなどにする。信州(長野県)ではタニシをツブといい、殻付きのままみそ汁に入れてつぶ汁にする。兵庫県の篠山(ささやま)では、その歯ごたえからタニシを丹波(たんば)ダコともよんでいる。[河野友美]

民俗

タニシは春の行事に結び付いている。一般に3月3日の節供には貝類を供える風習があるが、タニシの酢みそ和(あ)えを用いる土地は多い。神奈川県厚木(あつぎ)市の飯山観音(いいやまかんのん)(長谷寺)では、タニシ市(まち)といって、4月12日の縁日にタニシを売る習慣があった。岩手県や宮城県などでは、春の彼岸前に、タニシを投げて家の屋根を越させると、火災にあわないという。この地方にはタニシを水神の使わしめとする観念があり、昔話の「田螺(たにし)長者」でも、水の神に子授けを願ったらタニシが生まれたと伝えている例がある。滋賀県守山(もりやま)市にはタニシの霊を祀(まつ)るという蜊江(つぶえ)神社がある。村の神がタニシを使わしめとするので、氏子はタニシを食べたり殺したりしてはならないという伝えは各地にある。長野県下高井郡山ノ内町の須賀(すが)の不動尊は、火事のとき田の中でタニシに守られたと伝え、眼病の人はこの不動に祈り、タニシを食べずにたいせつにすると治るという。埼玉県幸手(さって)市の神明(しんめい)神社の境内に祀られる菅谷(すがたに)不動(田螺不動)にも同様の伝承があり、2個のタニシの絵を描いた絵馬を納めて眼病の祈願をする。『常山紀談(じょうざんきだん)』などに、盆の上に二方に分けてタニシを置き、一夜たって、その進み方で大坂の陣の勝敗を占ったら当たっていたという話があるが、このタニシによる占いは、中国のほか東南アジアにもある。[小島瓔

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