スペイン北東部、カタルーニャ地方タラゴナ県の県都。人口11万3129(2001)。地中海に面し、標高70メートルの石灰岩の丘陵斜面とその麓(ふもと)に位置する。ローマ時代からタラコTarracoの名で知られ、アウグストゥス帝時代の紀元前27年にはローマの属州ヒスパニア・タラコネンシスHispania Tarraconensisの首都となり、ハドリアヌス帝時代にはローマ世界随一の港町として繁栄した。早くからキリスト教がもたらされたが、8世紀にはイスラム教徒の侵入を受けた。町の歴史を反映してローマ時代の遺跡に富み、城壁、バラーの凱旋(がいせん)門、水道橋などが残る。また考古学博物館は有名。大司教座所在地で、12~13世紀の大聖堂がある。農産物取引、ぶどう酒製造、織物・化学工業、観光業などの経済活動があるほか、港からぶどう酒、たばこ、果物などが輸出される。
[田辺 裕・滝沢由美子]
スペイン北東部,カタルニャ地方の同名県の県都。人口11万5756(2001)。地中海に臨む丘の上にあり,自然の良港を擁するため,タラコTarracoと呼ばれたローマ時代には属州ヒスパニア・タラコネンシスの主都であり,交易および軍事上の要地として,イベリア半島内で最も栄えた都市の一つであった。水道橋をはじめ,スキピオの塔(墳墓碑),近郊のバラーにある凱旋門など,当時の遺跡が数多く残されている。5世紀には西ゴート族,8世紀にはアラブの侵入により市街の大部分が破壊され,その結果,半島北東部の中心地はバルセロナへ移された。13世紀にはマリョルカ島の征服に参加して交易港として復活した。19世紀には織物業,現在では化学工業も導入され,バルセロナとともに北東部工業地帯の一角を成している。
執筆者:鈴木 昭一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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