タンカ

改訂新版 世界大百科事典 「タンカ」の意味・わかりやすい解説

タンカ
thaṅ-ka

チベット中心とするラマ教文化圏で用いられる掛幅装の仏画。タンクthaṅ-skuともいう。堂内に掛けて礼拝対象とする一方,僧侶が村々を持ち歩いて宗教儀礼本尊としたり,絵の内容を講釈したりした。おそらくインドのパタpaṭa(絹絵)に起源し,チベットでは10世紀ごろには描かれるようになった。現存するものは17世紀以後のものが多く,現在でも描き続けられている。その作風は,古くは東インドのベンガル地方やネパール様式,またカシミール様式の影響を受け,後には中央アジアさらには中国様式の流入をみた。画面形式は多様で,あえて分類すれば,曼荼羅形式,独尊形式,千体仏形式,説話図形式に分けることができ,それらを複合した形式のものもある。曼荼羅形式には,日本の胎蔵界曼荼羅(両界曼荼羅)に似たものと,インドのヤントラのような幾何学図形に尊像を小さく配したものとがある。独尊形式は仏,菩薩,明王,ラマ教の祖師などの主要な尊像を中央に大きく描き,それに関係ある諸尊周囲に小さく描いたもの。ツォンカパなどの祖師を中心に諸尊を樹木状に配した諸尊樹(または集会樹。チベット語でツォクシンtshog śiṅ)という特異な形式もある。千体仏形式は多数の同じ大きさの諸尊を縦横に配列したもの。説話図形式には,釈迦を中心に周囲に仏伝を描いたものや,浄土図,五趣生死輪(ごしゆしようじりん),星辰図,十牛図などがある。
曼荼羅
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