チェスタートン(英語表記)Gilbert Keith Chesterton

精選版 日本国語大辞典 「チェスタートン」の意味・読み・例文・類語

チェスタートン

(Gilbert Keith Chesterton ギルバート=キース━) イギリス小説家批評家。警抜な着想と逆説的な論法で評論を発表。ブラウン神父ものなどの推理小説作者としても知られる。(一八七四‐一九三六

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改訂新版 世界大百科事典 「チェスタートン」の意味・わかりやすい解説

チェスタートン
Gilbert Keith Chesterton
生没年:1874-1936

イギリスの作家,詩人,文人批評家。ロンドン生れ。不動産仲買人の子。セント・ポール私立中学を経て,ロンドン大学に学ぶ。友人E.H.ウィリアムズの主宰する出版社の《ブックマン》誌の書評子として20歳ごろからジャーナリズムに登場,その後も種々の雑誌でジャーナリストとして活躍するとともに,20世紀初頭には親友H.ベロックと政治の腐敗をつく雑誌《新証言》を創刊,カトリシズムの今日性を強く主張するとともに,社会主義に反対し,所有の集中を擁護した。この後もイギリスのカトリシズムの指導者として精力的に活躍し(正式にカトリックに改宗したのは1922年で,その遅さがむしろ奇異とされた),当時の進歩派,とくに進化論の影響の濃いG.B.ショーH.G.ウェルズなどと数々の論戦をした。さらに詩,劇,小説,批評などにも,彼らに匹敵する警抜な着想と逆説的な筆法で縦横の活躍を示した。評論では彼のカトリック的な宗教観,政治観,社会観を説いた《異端》(1905),《正統》(1906)などがとくに有名であるが,この後も《ローマの復活》(1930)など晩年に至るまで論争的評論を数多く書いている。また小説でも,カトリックの司祭探偵にして人気を博した〈ブラウン神父〉ものの連作(1911,14,26,27,35)や《ノッティング・ヒルのナポレオン》(1904)や《ドン・キホーテ帰還》(1922)などがあるほか詩集では《白馬バラッド》(1911)が有名。このほか《スティーブンソン》(1902)や《ディケンズ》(1906)などのすぐれた評伝も多い。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「チェスタートン」の意味・わかりやすい解説

チェスタートン
Chesterton, Gilbert Keith

[生]1874.5.29. ロンドン
[没]1936.6.14. バッキンガム,ベコンズフィールド
イギリスの批評家,小説家。 H.ベロックと並ぶ,当代のカトリシズムの代表者。セント・ポール校を経てスレード美術学校で絵を,ロンドンのユニバーシティ・カレッジで文学を学んだのち,ジャーナリズムに入り,ユーモアに富んだ逆説や警句を駆使して,広い範囲にわたって健筆をふるい,G.B.ショー,H.G.ウェルズらと論争した。社会批評の領域では,土地再配分論の立場で『現世の欠点』 What's Wrong with the World (1910) を書き,文学批評の面では,『ブラウニング論』 Robert Browning (03) ,『ディケンズ論』 Charles Dickens (06) ,『ビクトリア朝文学論』 The Victorian Age in Literature (13) がある。また「進歩」思想に痛撃を加えた『正統とは何か』 Orthodoxy (09) を書き,1922年カトリックに改宗,『アシジの聖フランシスコ』 St. Francis of Assisi (23) ,『永遠の人間』 The Everlasting Man (25) ,『聖トマス・アクィナス』 St. Thomas Aquinas (33) を著わした。その他,小説『ノッティング・ヒルのナポレオン』 The Napoleon of Notting Hill (04) ,短編集『木曜日の男』 The Man Who Was Thursday (08) ,「ブラウン神父」が活躍する一連の推理小説 (11~35) ,詩,『自伝』 (36) がある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「チェスタートン」の意味・わかりやすい解説

チェスタートン
ちぇすたーとん
Gilbert Keith Chesterton
(1874―1936)

イギリスの作家。20世紀初頭のエドワード王朝期に、小説、随筆、評論、詩、劇などの各分野に健筆を振るい、その著作は生涯に100冊を超えた。1922年ローマ・カトリックに改宗。ベロックと並ぶカトリックの文筆指導者として、ショーやウェルズらと論戦を交わしたが、よき友人でもあった。彼の信仰表白は『アッシジの聖フランシス』(1922)、『永遠の人』(1925)、『聖トマス・アクィナス』(1933)などに詳しい。これとは別に、カトリック司祭の素人(しろうと)名探偵を主人公にした推理小説の連作、たとえば『ブラウン神父の無実』(1911)などで人気を博した。詩集には『白馬のバラッド』(1911)があり、評論ではブラウニング、ディケンズらビクトリア朝文学者に関するもの、とくに『文学におけるビクトリア朝』(1913)が著名。

[川崎寿彦]

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百科事典マイペディア 「チェスタートン」の意味・わかりやすい解説

チェスタートン

英国の作家,評論家。逆説とウィットに富む文体で近代文明をきびしく批判し,カトリック復興と伝統主義を主張した。評論《ディケンズ論》,小説《ノッティング・ヒルのナポレオン》《木曜日の男》などが代表作。推理小説では素人(しろうと)探偵ブラウン神父の活躍する一連の短編集が人気を博した。
→関連項目小酒井不木

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世界大百科事典(旧版)内のチェスタートンの言及

【透明人間】より

…決定版といえるのは人間の生理機能を逆利用したもので,ニーブンL.Niven《地球からの贈物》(1968)の主人公は,人間の瞳孔が注視のときには開き,そうでないときには閉じるという生理メカニズムを利用し,超能力で瞳孔を強制的に絞らせることによって,相手に対し不可視となる。また推理小説ではチェスタートンが《見えない男》(1911)で,犯人が郵便配達夫だったために目撃者の心理的盲点に入ってしまうという設定を考案している。【柴野 拓美】。…

※「チェスタートン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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