改訂新版 世界大百科事典 「ベロック」の意味・わかりやすい解説
ベロック
Joseph Hilaire Pierre Belloc
生没年:1870-1953
フランス生れのイギリスの作家。G.K.チェスタートンと並んでローマ・カトリック信徒の文学者であり,ともに100冊を超える膨大な著作をもつエドワード朝の巨人的存在。社会主義的なH.G.ウェルズ,G.B.ショーと敵対関係にあり,しばしば激しい論陣を張って対決した。あらゆる文学ジャンルを手がけ,小説には《エマニュエル・バードン》(1904)など機知に富むものがある。エッセーには《なんでもないことについて》(1908),《すべてについて》(1909)などがあり,またノンセンス詩の系譜に属するものとして《いたずらっ子の動物記》(1896)がある。一方,《隷属の国家》(1912)は彼のまじめな側面を伝える文明論である。また歴史的伝記としては《ダントン》(1899),《ロベスピエール》(1901),大冊の歴史《イングランド史》4巻(1925-31)がある。しかし,彼の最もすぐれた面をひき出しているのは彼の心の巡礼の旅の記である《ローマへの道》(1902),《“ノナ号”の航海》(1925)などの紀行文であろう。
執筆者:出淵 博
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報