葉や根を利用するキク科の深根性多年草。キクニガナともいう。野生型のものはヨーロッパからシベリア,北アフリカに広く分布するが,ヨーロッパで栽培化された。日本へは江戸時代末期に導入されたが,一般化したのは近年になってからである。多肉の根から羽状に切れ込んださじ形の根生葉を広げ,春に高さ1m以上の花茎を出し,まばらに分枝し開花する。頭花は直径4cm以上となり明るい青色であるが,品種によって白,淡紅色のものもある。生育は旺盛で寒暖いずれの地域においても育ち,環境の適応性は広い。播種(はしゆ)は夏季で,早く播種すると抽だい(薹(とう)立ち)する。サラダ用品種は葉を軟白する。軟白しないものは苦みが強く食用にむかない。ドイツ,フランスに多いコーヒー代用品種は太い根を乾燥し,いって粉末にしコーヒーの代用,あるいは混用物として用いる。
執筆者:高橋 文次郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
キク科(APG分類:キク科)の多年草。和名キクニガナ。原産はヨーロッパ、北アフリカ、中央アジア地域。根は太い直根で、早春に狭長で先のとがった根出葉を出す。茎は夏にとう立ちして高さ1~2メートルになり、上部に数本の花枝をつける。花枝には葉はない。花は径3センチメートルほどのタンポポに似た形で、色は青紫、淡紅、白色など品種によって変異がある。茎葉や根を傷つけると白い乳液が出る。ヨーロッパでは葉や根を利用するため、かなり古くから栽培されているが、栽培・利用が多いフランスで栽培が始まったのは17世紀ころであるといわれている。日本へは江戸末ごろに導入された。2000年代に入ってから、栽培する地域が増えている。
春に種子を播(ま)き、株を養成し、秋に掘り上げて密に植え込み、鋸(のこ)くずなどを厚くかけて早春の芽生えを軟白させ、軟らかい葉をサラダ用にする。根は煮食する。また根を刻んで乾燥させ、炒(い)って粉にしてコーヒーに混入し、苦味をつけるとともに、芳醇(ほうじゅん)な風味を出させる。根の主成分はイヌリンである。
[星川清親 2022年3月23日]
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