チョウジザクラ(読み)ちょうじざくら

日本大百科全書(ニッポニカ) 「チョウジザクラ」の意味・わかりやすい解説

チョウジザクラ
ちょうじざくら / 丁子桜
丁字桜
[学] Cerasus apetala (Sieb. et Zucc.) Ohle ex H.Ohba
Prunus apetala Franch. et Sav.

バラ科(APG分類:バラ科)の落葉小高木。葉は互生し、倒卵状楕円(だえん)形で長さ5~7センチメートル、先は尾状に長くとがり、縁(へり)に欠刻状の重鋸歯(きょし)があり、両面および葉柄に開出する密毛がある。4月ころ、葉の出る前に径約1.5センチメートルの小さな白色花を散形状に1~3個開く。花托(かたく)は筒形で長さ0.8~1センチメートル、萼片(がくへん)の2.5~3倍の長さがあり、花柄とともに短毛を密生する。花柱の下半部に開出毛がある。山地に生え、本州九州の一部に分布する。青森県から北陸地方の日本海側に分布する変種オクチョウジザクラvar. pilosa (Koidz.) H.Ohbaは、花は本種より大きくてやや紅色を帯び、普通は花柱に毛はない。名は、花が香料植物のチョウジに似ることによる。

小林義雄 2020年1月21日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「チョウジザクラ」の意味・わかりやすい解説

チョウジザクラ(丁子桜)
チョウジザクラ
Prunus apetala

バラ科の落葉小高木。メジロザクラともいう。本州と九州の山地に生える。葉は小型で長さ5~7cm,倒卵形上部は幅が広く,先端は尾のように伸びる。葉縁には欠刻状の重鋸歯が目立つ。密腺は葉柄上になく,葉身の基部につく点も他の多くのサクラ類とは異なる。早春に,葉の出る前に開花し,散形花序をなして2~3個ずつ小さな花をつける。花弁は萼に比べて非常に小型で淡紅色を帯びる。和名は花の形が香料にするチョウジに似ていることによる。なお,本州中部以北の山地に生じ,葉の鋸歯が特に著しいものをオクチョウジザクラ P. apetala var. pilosaという。

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百科事典マイペディア 「チョウジザクラ」の意味・わかりやすい解説

チョウジザクラ

本州,九州の山野にはえるバラ科の落葉小高木。若木には開出毛がある。葉は倒卵形でとがり,重鋸歯(きょし)をもち,基部は細くなって,やや短い柄がつく。春,花は葉と同時かわずかに早く開き,1〜3個が散形花序に下向きにつき,径1.5〜2cm。花柄や萼(がく)に開出毛がある。花弁は5個で白色〜微紅色。萼筒は細い筒形で紅紫色
→関連項目サクラ(桜)

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世界大百科事典(旧版)内のチョウジザクラの言及

【サクラ(桜)】より

…一般にサクラと総称しているものは,主として北半球の温帯と暖帯に分布しているバラ科サクラ属サクラ亜属の主として落葉性の樹木で,花がいっせいに開花して美しいものが多く,広く観賞されている。日本にはヤマザクラ,オオヤマザクラをはじめ,カスミザクラ,オオシマザクラ,マメザクラ,エドヒガン,チョウジザクラ,ミヤマザクラ,タカネザクラなど10種類ほどの自然種を基本として,変種や品種をあわせると約100ほどの種類が野生している。サクラ類の多くは陽樹で,しかも二次林を構成する生長の速い種が多いため,人家で栽植するにも好適であり,これらの野生種から多数の園芸品種が育成され,その数も200から300といわれる。…

【シラカバ(白樺)】より

…アズサとも呼ばれ,古代には弓の材とされたといわれる。【岡本 素治】
[カバの語源]
 カバの語は,カバノキ属の樹木を総称する場合と,チョウジザクラ,ウワミズザクラ,シラカバ,ウダイカンバなどの樹皮もしくはこれらの樹木をいう場合と2通りある。後者は古語の〈かには〉にあたるもので,古くはカバノキとサクラの仲間は,樹皮が似ているので混同されていたが,ともに曲物の材料とされた点は共通している。…

※「チョウジザクラ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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