改訂新版 世界大百科事典 「ツバメオモト」の意味・わかりやすい解説
ツバメオモト
Clintonia udensis Trautv.et Mey.
亜高山帯の針葉樹林下に多いユリ科の多年草。本州(奈良県以北),北海道からアジア大陸東北部にかけて広く分布し,ヒマラヤには別亜種が分布する。ヒマラヤの植物相が日本や中国と深い関連をもつことを示す一例として知られる。5~6月,高さ20~30cmの花茎の上部にややまばらな総状花序をつける。花は白色。果時には茎は40~70cmとなり,漿果(しようか)はるり色で美しい。葉は地上茎の下部に集まり,基部は鞘(さや)状に茎をつつみこむ。外見上オモトに似ているが,葉質はずっと軟らかい。若葉は食用となる。漢方では雷公匕(らいこうひ)と呼び,止痛剤に用いる。
ツバメオモト属は北アメリカと東アジアに隔離分布する植物の一つで,5種が知られている。北アメリカ東部産のC.borealis Rafin.はメーン州の山菜として知られている。北アメリカ西部産のC.andrewsiana Torr.はピンクの花をつけ,美しい。
執筆者:矢原 徹一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報