第2次大戦後のアメリカで急速に普及した小売形態の日本での呼称で,アメリカではディスカウント・ハウス(ロンドンの手形割引業者とは異なる)と呼ばれている。1930年代の〈公正取引法〉の施行以後出現したが,組織的に発展するのは戦後である。この小売方法は,電気製品,家具,カメラ,時計といった耐久消費財から衣料のような一般消費財に至る多様なナショナル・ブランド商品(〈ブランド〉の項参照)を,立地条件の劣った地域に簡素な店舗を設け,セルフサービスのみならず裸のままで商品を売るといった大量販売方式の採用によって,メーカーの希望する販売価格よりはるかに安い価格で消費者に提供するというものであった。これは,著名なブランド商品の場合には消費者の信用度が高いため,百貨店や一般の小売店が行っている販売サービスの必要がないことを狙った商法であり,当時の消費者のニーズに受け入れられて発展した。アメリカ的な小売業革新の事例の一つである。しかし今日では,ナショナル・ブランド商品のみならずプライベート・ブランド商品を扱う店もあるし,またかつてのごとく多様な商品を売るのではなく,一定の商品ラインに絞るものも出現している。
ディスカウント・ハウスの出現は,ナショナル・ブランド商品の大量販売をいっそう促進したばかりでなく,一般商品に激しい競争を強いることによってその価格を低落させるという効果をもった。しかし同時に,一部の業者のなかにはメーカーの希望小売価格を故意に高く表示してディスカウント幅を誇大に宣伝し,信用を失墜するといった例も少なくなかった。今日のアメリカでは小売業態の一つとしてすでに認知されているが,日本に導入されたのは1960年前後であり,カメラ,時計,ゴルフ用品のような特定の商品ラインで発展し,80年代に入ってからはボックス・ストアといった呼称で呼ばれる一般消費財のディスカウント・ストアも,大手のスーパーなどによって行われている。
執筆者:鳥羽 欽一郎
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直訳すれば割引店、安売屋をいい、第二次世界大戦後アメリカで普及したディスカウント・ハウスの日本での呼称。耐久消費財や衣料品などの有名商標商品を、メーカーから直接大量安価に仕入れ、経費を節約して現金で安売りする。割引率は、定価ないしメーカー希望小売価格の20ないし30%程度が多いが、ときには40%を超えることもある。安売りの基盤は、(1)大量現金仕入れ、(2)薄利多売、(3)高回転率、(4)現金販売、(5)持帰り制、(6)販売経費の徹底した削減などである。ディスカウント・ストアは、かつては東京秋葉原の電気器具店群が代表的なものであったが、近年では取扱商品が広がり、チェーン店形式のものも多くなっている。
[森本三男]
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…たとえば最寄店は食料品,医薬品,日用雑貨のような日常生活の必需品の小売機能を担当し,買回り店は装飾品,家具,家電製品のように消費者がその品質や価格をそのたびごとに比較して購入する商品の小売機能を,専門店は貴金属,宝石,特殊な趣味品あるいは一部のスポーツ用品などのように品質の限定された高級品の小売機能を担当している。また店舗の営業形態によっても担当される小売機能は分化されており,百貨店は主として中級品から高級品にいたる幅の広い価格の商品をあらゆる種類にわたって販売するという小売機能を,大型スーパーは中級品を主体とした標準化商品を,ディスカウント・ストアは大量生産された低価格商品の量販という機能を,さらにスーパーマーケットは食料品を主体とした小売機能を,チェーン・ストアは商品部門を限定した各種商品の小売機能をというように,各地域,人々の所得,人口差に合わせた多様な店舗が展開されて,それぞれの小売機能を果たしている。 このような小売機能を補助しているのが,小売業者を除く広義の商的・物的流通機関が担当する流通機能である。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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