日本大百科全書(ニッポニカ) 「ディーゼル燃料」の意味・わかりやすい解説
ディーゼル燃料
でぃーぜるねんりょう
diesel fuel
ディーゼルエンジン用の燃料。自動車、鉄道用などの高速ディーゼルエンジン用には軽油を用いる。通常、軽油は石油製品であり、沸点範囲170~370℃程度、比重0.8~0.850の無色または茶褐色を帯びた透明の油である。寒冷時のエンジンの始動性が問題となるので、着火性を示すセタン価(45以上)、流動性を示す流動点がディーゼルエンジン用軽油の性能を示す因子となる。想定される最低気温に対応して特1号(5℃以下=流動点。以下同)、1号(零下2.5℃以下)、2号(零下7.5℃以下)、3号(零下20℃以下)、特3号(零下30℃以下)の5種類の軽油がJIS(ジス)(日本工業規格)により定められている。
船舶用などの低速ディーゼルエンジンには軽油とともに高品位の重油(A重油、もっとも粘度の低い重油)が用いられる。一般に、重油は軽油に比べ、着火性(セタン価)が低く、粘度も高いが、経済性に優れているためである。また、農業用発動機などのディーゼルエンジンには灯油が使われている。
石油以外からもディーゼル燃料を製造することは可能である。石炭または天然ガスを合成ガスに変換し、フィッシャー‐トロプシュ法により軽油を製造することができる。南アフリカでは工業化されているが、経済性は低い。また、油脂からの製造も可能である。油脂とメタノール(メチルアルコール)を水酸化ナトリウム存在下でエステル交換することにより、バイオディーゼルを製造することは可能であり、東南アジア産のやし油やてんぷらの廃油からの製造が試みられている。しかし、日本で大規模に行うことは安価な原料を大量に入手しなくてはいけない点でむずかしい。
[難波征太郎]
『WHO編、環境庁環境保健部環境安全課監訳、小林剛訳『WHO環境保健クライテリア ディーゼル燃料及び排出物』(1999・ラテイス、丸善発売)』▽『松村正利・サンケァフューエルス編『図解 バイオディーゼル最前線』(2006・工業調査会)』