デンマーク王国の公用語で、国内のほかフェロー諸島、グリーンランドでも使われている。系統的にはインド・ヨーロッパ語族ゲルマン語派のノルド諸言語の一つで、とくにスウェーデン語、ノルウェー語と近い関係にある。
デンマーク語を耳で聞くと、同じ北欧人でも多少わかりにくいと感じる。それは、デンマーク語が音声面で大きく変化したためで、たとえばスウェーデン語やノルウェー語では音調の違いであるものが、デンマーク語では喉頭(こうとう)を緊張させるかどうかの違いに変わってしまった。この調音は「声門閉鎖」とよばれるが、声門が実際に閉鎖されるわけではない。さらにデンマーク語の特徴として、母音の後ろの破裂音が弱まった。つまりp、t、kがそれぞれb、d、gになり、場合によってはさらに摩擦音に変化し、なかには消えてしまったものもある。たとえば「パンを焼く」という語は、スウェーデン語baka、デンマーク語bageと同じようにつづるが、耳で聞くと母音の音色の違いもあって、「バーカ」「ベーェ」とかなり違う。発音の変化が著しいため、つづり字と発音の関係は複雑になっている。九つある母音字は文字と発音が一対一に対応せず、また発音されない子音字がある。たとえば、guld(金)とbund(底)ではuの発音が異なり、語末のdはどちらも発音されない。
現在の正書法は1889年に確立されたもので、1948年に一部改められ、名詞を大文字で書き始める習慣はなくなった。文法的には、語形変化がたいへん単純化している点、英語によく似ている。名詞は属格でsがつくほか格変化をせず、動詞も数や人称で変化しない。また名詞には共性と中性の区別があり、名詞の語末に付加される定冠詞は、名詞の性、数によって形が異なる。中世以来、低地ドイツ語から単語や接頭辞、接尾辞を多数取り入れ、また高地ドイツ語に倣って数多くの語を合成したため、語彙(ごい)の構成はドイツ語に似ている。
[福井信子]
『秦宏一著『デンマーク語の入門』(1978・白水社)』▽『岡田令子・菅原邦城・間瀬英夫著『現代デンマーク語入門』(1984・大学書林)』▽『山野辺五十鈴著『自習 デンマーク語文法』(1986・大学書林)』▽『横山民司著『エクスプレス デンマーク語』(1988・白水社)』▽『アラン・カーカー他編、山下泰文他訳『北欧のことば』(2001・東海大学出版会)』
デンマーク王国の公用語であり,約509万人(1977)により使用される。デンマーク語はゲルマン語派の中の東ノルド語に属し,歴史的に古デンマーク語(1525ころまで)と近代デンマーク語(1525ころ以後)の二つの時期に区分される。デンマーク語の最古の記録は新ルーン文字による9世紀以降の碑文であり,最古のラテン文字による記録としては,14世紀の各地方の法律写本が残されている。
古デンマーク語の時代には,母音の後の子音p,t,kのb,d,gへの変化,声門閉鎖音の出現などデンマーク語特有の音韻現象,また,ハンザ同盟の進出に伴う低地ドイツ語からの商工業に関する語彙の大規模な借用が起こっている。1397年よりデンマークはノルウェーと連合関係に入り,その結果,デンマーク語は支配者の言語としてノルウェーにおける行政・教会など公的な領域でノルウェー語に取って代わるようになった。16世紀の宗教改革の時代,聖書のデンマーク語訳《クリスティアン3世欽定訳聖書》(1550)は文語の統一に向けて大きな力を及ぼし,18世紀以降,J.L.ホルベアをはじめとする多くの作家たちは文語の規範の確立に貢献した。
19世紀後半以来,デンマークでは数次にわたり正書法の改正が行われたが,1948年の改正において,名詞の大文字書きの廃止,長母音を示す母音の重複aaのåによる置換えが行われ今日にいたっている。
執筆者:斎藤 治之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…ラテン文字による記録では,12世紀後半以降の法律,宗教,歴史などに関する写本が残されており,その中でも特に重要なものは,13世紀中ごろの教訓的内容をもつ《王の鑑(かがみ)》である。 ノルウェー語は,14世紀の中ごろから,スウェーデン語,デンマーク語と同様に,名詞・動詞の屈折体系の崩壊と語順の固定化などの言語的変化を経て,それまで多くの共通性をもっていたアイスランド語と決定的に分離した。1397年からノルウェーはデンマークと連合関係に入り,その結果,デンマーク語が行政・教会などあらゆる公的な領域でノルウェー語に取って代わり,ここにノルウェーにおける文語(=デンマーク語)と口語(=ノルウェー語)との間には大きな断絶が生じることになった。…
※「デンマーク語」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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