日本大百科全書(ニッポニカ) 「ホルベア」の意味・わかりやすい解説
ホルベア
ほるべあ
Johan Ludvig Holberg
(1684―1754)
デンマークの劇作家、学者。ノルウェーのベルゲンに生まれ、早く父母を失い孤独な青春を過ごす。コペンハーゲン大学に学ぶが、中退しヨーロッパを放浪、オックスフォード大学で史学を専攻。帰国後執筆した『ヨーロッパ列強史序説』(1711)で学位を得、コペンハーゲン大学教授となる。法律、哲学、古典語、歴史、地理などを講じ万能学者として知られる。初め文学的関心は薄かったが、同僚の学者を風刺した詩が評判をよんだことから、偽善的社会を暴露する長詩『ペーデル・パウルス』(1719~20)を書く。この作品は市民を侮辱するものとして訴えられたが、国王が読み「無害なおもしろい本」と裁決したため、無罪となる。
1722年、首都に初めて劇場が創設されるにあたり、依頼されて劇作を試み、ほぼ1年半の間に『産室』『山のエッペ』『居酒屋政治家』『エラスムス・モンタヌス』など26編を書き、上演。その多くは風刺喜劇として成功を収め、「北欧のモリエール」とよばれ、北欧文学の存在を世界に知らせた。前記の諸作は今日でもしばしば上演される。30年、篤信家の王がたち「劇場は諸悪の源」として閉ざすに及び学業に復帰。またラテン語でスウィフト流の風刺小説『ニイルス・クリムの地下旅行』(1740)を発表。その後劇場が再開され、新作七編を書いたが、これらの作には往年の生色がみられない。書簡五巻も知られる。
[山室 静]