改訂新版 世界大百科事典 「トキワマンサク」の意味・わかりやすい解説
トキワマンサク
Loropetalum chinense(R.Br.)Oliv.
マンサク科の1属1種の常緑小高木。高さ10m,直径25cmほどになり,密に分枝して小枝は長く垂れ,若枝は黄褐色の星状毛を密生する。葉は互生し,ややいびつな楕円形ないし卵状楕円形で,長さ1.5~4cm,両面に星状毛を散生する。4月下旬から5月に,当年枝の先に3~8個の無柄の花がつく。花は子房上位,上端は4裂し,花弁は4枚,線形で長さ15~20mm,白色,初めは巻いている。葯隔の長く突出するおしべおよび小型の仮雄蕊(かゆうずい)と,2本の花柱がある。秋に卵球形で長さ7~8mmの蒴果(さくか)を結び,2裂して2個の黒い種子を出す。中国中・南部とインド北東部に分布し,1905年中国から輸入されたランの鉢から生えたものに和名が与えられた。その後31年に伊勢神宮林で自生木十数本が発見され,さらに69年熊本県荒尾市小岱(しようだい)山でも見つかった。また静岡県湖西(こさい)市でも自生らしいものが見つかっている。挿木でよく繁殖し,ときどき庭園などに植えられている。東京都文京区の小石川植物園にはよく茂った株がある。
執筆者:濱谷 稔夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報