物質の基本的粒子であるクォークは6種類あることが知られているが、その6番目のクォーク。あらゆる物質は原子とよぶ小さな要素から成り立っている。原子の中心には原子核とよぶ重いかたまりがあり、その周りを電子が回転している。さらに原子核は陽子と中性子からできている。20世紀半ば過ぎから素粒子をつくりだす大型加速器が製造され、陽子や中性子の仲間が続々と発見されてきた。1963年、M.ゲルマンとG.ツバイクはクォーク・モデルを提唱し、現実の粒子の多様性を、アップ、ダウン、ストレンジとよぶ3種類のクォークで説明した。その後さらに、チャーム、ボトムが発見され、5種類のクォークが実験的に確認された。ところで、現在もっとも信頼されている素粒子理論である「標準理論」は、6種類のクォークを予言している。1977年にボトム・クォークの存在が発見されて以来、世界の素粒子物理学者たちは、6番目のトップ・クォークの発見を最大の課題の一つとして研究を進めてきた。1994年、日米伊を中心とする国際共同実験グループは、米フェルミ国立加速器研究所の加速器「テバトロン」を用いて、トップ・クォーク存在の証拠をつかんだ。これは、直径2キロメートルのリングの中で陽子と反陽子とを光速近くまで加速し衝突させたとき発生する莫大なエネルギーを利用してトップ・クォークを生成するというもので、約1兆回の陽子・反陽子の衝突現象から、トップ・クォークが関係しているとみられる現象を12個観測した。その後も実験を継続しデータを蓄積したが、同じ研究所のもう一つの実験グループもトップ・クォークを観測しており、その存在が確実なものになった。驚くべきことは、原子に比べるとけた外れに小さいトップ・クォークが、陽子・中性子の185倍という重さをもつことである。それは重い金属原子1個にも匹敵するという超重量で、巨大な重さの謎が理論物理学者に投げかけられている。トップ・クォークの寿命は極端に短いので自然界には存在しえないが、開闢(かいびゃく)直後の宇宙には存在していたはずであり、今後トップ・クォークの性質が明らかにされれば、宇宙の始まりについても貴重な知見が得られることになる。
[広瀬立成]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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