翻訳|docking
宇宙空間で二つ以上の宇宙船が結合することをいい,ランデブーrendezvous(二つの宇宙船が同じ軌道に入り,接近した状態でともに飛行すること)に引き続いて行われるものである。1966年にジェミニ10号とその目標船が有人ドッキングに初めて成功し,67年にはコスモス186号と188号とが無人ドッキングに成功した。さらに大きな意味をもったドッキングには,アポロ計画での月着陸船(LM)と司令船(CSM)のドッキングや,アポロ・ソユーズ共同飛行における米ソ宇宙船のドッキングがある。ドッキングとランデブーは,将来の宇宙開発の発展に非常な重要性をもってくる。たとえば,スペースコロニー,宇宙工場のような大型構造物の建設など,ランデブーとドッキングの技術が進歩すれば,これらのことは実現可能になってくる。
ドッキングを確実に行うためには,ランデブー船を目標船に接近させるときの誘導システムの特性,ドッキング時の衝撃緩和と結合技術,エンジン停止時間の精度などの問題がある。ランデブーのとき,両者の速度の差が大きいと,ドッキングの衝撃が大きく,ランデブー保持時間(両者がいっしょに飛行する時間)がきわめて短くなり,目的を達成することがむずかしくなる。このことは,目標船の軌道とランデブー船の軌道が,ランデブー点(ランデブーを行う場所)で接していることを必要とする。このように,ドッキングにはランデブーの技術が大きな問題となってくる。ランデブーにはいろいろな方法があるが,一般には,まずランデブー船を目標船の軌道面と同じ待機軌道へ投入し,そこからランデブー用軌道に移す方法が用いられている。このとき,ランデブー用軌道には,エネルギーが最少ですむホーマン型軌道移行(ホーマン軌道)が利用されている。
ドッキングは,基本的には,(1)ランデブーの最終段階で残っている位置,姿勢,速度などの最終調整,(2)反動力が生ずる前の初期接触捕捉(ほそく),(3)結合時の反動力が少なく,またこれを吸収するような機構による結合,(4)結合の保持,(5)ドッキング,(6)結合目的によっては両構造体間の連結個所のシール,などの手順で行われる。また,結合された構造物が,計画的に,または緊急事態の発生時には,すみやかにドッキングの逆の過程によって安全に分離可能な性能をもつことを要求される。ドッキングの機構の構造的な代表例はアポロのCSMのプローブ(探針)とLMのドローク(円錐)との結合構造である。
一般に,有人ドッキングの場合は連結個所のシールの気密性の問題はあるが,無人ドッキングのほうが操作や技術の面からむずかしく,精度のよい遠隔操作システムが必要となってくる。
執筆者:松尾 弘毅
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