同一平面内において円軌道から円軌道への移行を行う場合に,宇宙船に与えなければならない速度変化の合計,つまり必要なエネルギーが最小になるような移行軌道。考案者であるドイツ人ホーマンWalter Hohmann(1880-1945)にちなんでこう呼ばれる。実際には,初期軌道を離れるときと目標軌道に到達したときの2回,速度変化を行う2インパルス軌道が必要速度最小になり(ただし,移行軌道の比によっては,3インパルスの移行が最適となる場合も存在),これらを含めてホーマン型移行と呼んでいる。軌道の形は楕円で,例えば地球から外惑星へ向かう場合には,地球の公転軌道上に近日点,目標の外惑星軌道上に遠日点をもつ,太陽を焦点におく楕円軌道になり,また内惑星へ向かう場合には,地球の公転軌道上に遠日点,目標の内惑星軌道上に近日点をもつ,太陽を焦点とする楕円軌道になる。外惑星へ向かう場合,第1インパルスは,地球の公転軌道上において接線方向へ,楕円軌道の遠地点が外惑星軌道に接するように与えられ,第2インパルスは,楕円軌道の遠地点で外惑星軌道の接線方向に,合速度が外惑星の公転速度に等しくなるように与えられる。内惑星へ向かう場合も同様である。大きなエネルギーを必要とする惑星探査機ではホーマン軌道をとることはとくに重要であるが,気象衛星のような静止衛星を高度の高い静止軌道へのせる場合にもホーマン軌道が用いられている。すなわち,ロケットによって衛星は最初パーキング軌道と呼ばれる高度250km程度の円軌道にのり,その後ホーマン軌道によって高度約3万6000kmの静止軌道へと移行する。このとき,遠地点での速度変化にはアポジモーター(小型の固体ロケット)が用いられる。
→宇宙飛行 →人工衛星
執筆者:松尾 弘毅
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…地球から火星や金星などの惑星に飛行する場合,最少の加速という意味でもっとも効率がよいのは,地球の公転軌道と目的の惑星の公転軌道に接する楕円軌道上を飛行することである。この楕円軌道はホーマン軌道と呼ばれる。ただしホーマン軌道を利用するには,ロケットが目的の惑星の軌道に到達したとき,ちょうどその惑星がその位置にいなければならないので,ロケットの発射時期を選ばなければならない。…
…目的の惑星に到達させるにはさらに増速が必要であり,また惑星への着陸や,惑星周回衛星とする場合にはいっそう燃料を必要とする。一般に化学燃料推進系を用いた場合,他の惑星に到達する所要エネルギー最小の軌道としてホーマン軌道というものがある。これは出発の際には地球の公転軌道に接し,太陽のまわりをちょうど半周したところで目的の惑星の公転軌道に接するような楕円軌道である。…
※「ホーマン軌道」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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