改訂新版 世界大百科事典 「ニカメイガ」の意味・わかりやすい解説
ニカメイガ (二化螟蛾)
rice stem borer
Chilo suppressalis
鱗翅目メイガ科の昆虫。翅の開張1.9~3cm。一般に雄は小型で,前翅の色が暗い。前翅はわら色で,黒褐色の細い条が多数あり,後翅は白色。前翅が黒褐色の個体もよく見られる。ほとんど日本全国,朝鮮半島,中国から東南アジア,南ヨーロッパに分布する。幼虫は,ウンカとともに日本で稲作の最重要な害虫とされ,陸稲,トウモロコシ,キビ,ガマ,マコモなど,種々のイネ科植物に寄生する。マコモで育ったものは,幼虫も成虫も大きく,翅の開張3.5cmに達することがある。年2回の発生で,幼虫で越冬し,5~7月に蛹化(ようか)する。第2回目の幼虫は,秋に成熟して,刈り取ったわらや株内で越冬する。四国南部など,一部の温暖地では,年3回発生するところもある。成虫は6~8月にもっとも多く見られ,よく灯火に飛来する。イネ科の茎や葉上で,翅をたたんで静止していると,前翅や体の色が背景と似ていてなかなか見わけにくい。幼虫はイネの茎に食入して枯死させるので,多発すると米の減収を招く。毎年全国的に発生し,水稲の被害がもっとも大きな害虫である。幼虫は,イネノズイムシ,ズイムシ,ニカメイチュウ,あるいは単にメイチュウとも呼ばれている。イネの栽培期とこのガの発生周期はきわめて密接につながっており,イネを早期に栽培すれば,成虫の発生も早くなる。
本種によく似たニカメイガモドキC.hyraxとヨシツトガC.luteellusの幼虫は,ヨシにつく。
執筆者:井上 寛
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報