改訂新版 世界大百科事典 「ニガナ」の意味・わかりやすい解説
ニガナ (苦菜)
Ixeris dentata (Thunb.) Nakai
人里や低山の路傍などにごく普通にみられるキク科の多年草。日本全土,中国,朝鮮に分布する。和名はかむと苦みがあることによる。ロゼットで越冬し,春に高さ約30cmの細い茎が直立する。葉は倒披針形で不規則に羽裂し,縁に歯牙がある。茎葉は耳状に茎を抱く。切ると乳液が出る。4~7月ころ,茎の先が分枝し,径1.5cmほどのやや小さな頭花をまばらにつける。頭花は数個の舌状花のみからなり,ふつう黄色で,ときに白色。瘦果(そうか)には汚褐色の冠毛があり,風散布される。若葉や根は苦いが,食用になる。また胃腸薬として民間で利用された。本種は二倍体(染色体数2n=14),三倍体,四倍体を含み,二倍体は有性生殖で,三・四倍体は無融合生殖により種子を形成する。また,形態的な変異に富み,多くの亜種や変種が記載されている。それらのうちタカネニガナssp. alpicola Kitam.は高山の岩場に生え,径2cmほどのやや大きな頭花をつける。茎葉は茎を抱かず,高さ10cm内外。ときに山草家により栽培される。
ニガナ属Ixerisは東アジアの固有属で,約20種あり,日本にはほかに,ノニガナ,ジシバリ,ハマニガナなど9種を産する。ハマニガナI.repens A.Grayは日本全土の海岸の砂地に生育する多年草で,花期は5~7月ころ。茎は砂中を長くはい,貯水器官となる。葉形からハマイチョウともいう。
執筆者:森田 竜義
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報