C21H27N7O14P2(663.43).略称NAD.以前は補酵素Ⅰ(CoⅠ),あるいはDPN(ジホスホピリジンヌクレオチド)ともよばれた.下の表に示したような酸化還元酵素の補酵素で,構造式は次のとおりである.NAD+は還元型基質から水素を受けとりそれを酸化し,還元型NAD(NADH)と H+ を生成する.NAD+の還元は次に示すようにニコチン酸アミドの部位で起こる.この反応は可逆的である.吸湿性の白色の粉末.水に易溶.酵母から単離されるが,ニコチンアミドモノヌクレオチドとアデノシン5′-リン酸との脱水縮合で合成される.NAD+:-31.5°(水).λmax 259 nm(ε 17.6×106).NADH:+14.8°(水).λmax 340 nm(ε 6.2×106).NAD+が関与するアルコール脱水素酵素の反応は次のように示される.
CH3CH2OH + NAD+CH3CHO + NADH + H+
反応が右へ進行するとき340 nm の吸光度は増加する.これを利用して酵素反応速度を測定することができる.また,NADHはフラビンを介してグルタチオンやシトクロムを還元する作用がある.
NADH + H+ + FAD → NAD+ + FADH2
FADH2 + 酸化型グルタチオン →
FAD + 2還元型グルタチオン
また,NAD+はDNAが切断されたとき,それを修復する酵素DNAリガーゼの作用にも関与する.LD50 4.333 g/kg(マウス,腹腔).[CAS 53-84-9]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドnicotinamide adenine dinucleotideの略称。DPN(ジホスホピリジンヌクレオチド),補酵素I,コデヒドロゲナーゼI(補脱水素酵素I)とも呼ばれる。…
…こうして1molのグルコースから2molのピルビン酸が生成するとともに,2molのATPが合成されることになる。グリセルアルデヒド‐3‐リン酸の酸化反応の電子受容体としてはNAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)が用いられるが,解糖反応の進行のためにNADHからNAD+を再生しなければならない。嫌気条件下では酸素は使えないので,ピルビン酸を乳酸に還元する最後の反応でNAD+を再生することになる。…
※「ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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