改訂新版 世界大百科事典 「ニタリクジラ」の意味・わかりやすい解説
ニタリクジラ
Bryde's whale
Balaenoptera edeni
ヒゲクジラ亜目ナガスクジラ科の哺乳類。表面水温20℃以上の世界中の温・熱帯海域に分布。イワシクジラに似るため〈似たり〉の名があり,漁業統計でも混同された時代がある。最大体長14mとイワシクジラに比べて小さく,ひげ板(左右片側250~370枚)は黒く短く(30~40cm),剛毛も黒く太い。畝(うね)は40~50本あり,へそに達する。背面と腋(わき)の下付近の畝は灰黒色,その他の体の下面は白い。各地の沿岸や沖合にいくつもの地方系群が知られ,体の大きさに差がある。妊娠期間は約1年,2~3年に1回1子を生む。繁殖は一年中行うが,系統によっては秋~冬に不明りょうな出産のピークがある。温帯系統以外は回遊をしない。イワシクジラと異なり,イワシ,サバ,ニシンなどの群集性魚類を主餌料とする。日本の太平洋沖合には2~3万頭が生息し,1997年まで捕鯨業の対象となっていた。高知県沿岸や東シナ海の個体は,これとは別の系群に属するとみられている。カツオの群れといっしょにいることがあるので,カツオクジラとも呼ばれる。本種には地理的な変異がいちじるしく,研究が進めば現在1種とされているものが複数の種に分けられる可能性がある。
執筆者:粕谷 俊雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報