翻訳|new town
まれに新都市と訳されることもある。第2次大戦後,都市の過大・過密化を是正するために,また荒廃した居住地の代替物として,ニュータウンの建設が世界の各地で行われた。その先駆はイギリスのニュータウンで,これが北欧諸国に伝播し,続いて旧西ドイツ,アメリカ,フランスなどで,それぞれ独自のニュータウンが建設された。日本でも住宅・都市整備公団や地方公共団体により,千里,泉北,高蔵寺,多摩などの各ニュータウンが建設され,または建設されつつある。ニュータウンの特徴として,(1)計画にのっとって開発されたもの,(2)雇用機会の増加など経済基盤の確立をねらったもの,(3)居住者の好みとか収入状況に応じて多様な型および価格の住宅を供給しうるもの,(4)コミュニティ施設,サービスおよびアメニティが確保されているもの,(5)対象団地を管理する公共または類似機関が存在しているもの,という5条件を満たすものとされている。
イギリスのニュータウンは1946年の新都市法のもとで発足し,77年まで同国の都市開発政策の最大の支柱であった。しかし同年以降,大都市の都心地区再開発に政策の重点が移り,新規のニュータウン計画は行われないことが決定された。この間,イギリスでは33のニュータウンが建設され,これらの全計画人口は330万人に達する。これらのニュータウンの規模,形態は建設時期ごとにいろいろ変わっている。初期のニュータウンでは,(1)平面的都市構造,(2)閉鎖的な近隣住区システム,(3)人口3万~5万人の小規模,低密度開発であったものが,中期のニュータウンでは,(1)より一段と立体的な都市構造,(2)より一段と開放的な住区システム,(3)人口5万~10万人の中規模,中密度開発へと移行し,後期のものでは,これまでのニュータウンの反省として中・小規模のものでは十分な都市的サービスが得られない点をとり上げて,人口20万~30万人のより大規模なニュータウンが計画された。交通計画についても歩行者の通る道と自動車の走る道とを区別する歩車分離システムを徹底させる一方,後期のランコーン,ミルトン・ケインズでは自動車利用を重視した交通計画が立てられている。
北欧諸国のニュータウンはイギリスと異なり,大都市の郊外住宅団地的なタイプのものが多い。冬季における暖房の効率性その他都市施設の有効利用の見地から,中・高層アパート団地が多く,一戸建住宅は全住宅数の10~20%である。代表的なものとしてストックホルム郊外でそれぞれ10~20km圏内にあるベリングビー,ファシュタ,シェルホルメン,森の都市として知られているヘルシンキ西郊15kmにあるタピオラ,コペンハーゲン南西10kmのフロンビー団地があげられる。あまりに画一的な住区計画に対し,社会開発分野よりも青少年非行問題,老人問題と関連して,近年批判の声がある。
旧西ドイツのニュータウンも,イギリス型ニュータウンとは異なった大規模住宅団地型のものが多い。フランクフルト都心部から6km西北にある人口5万人のノルトウェストシュタット,ミュンヘン南東9kmにある人口8万人のペルラハ,エッセンの近くでルール地方の炭鉱に働く労働者のために建設された人口5万2000人のビュルフェンなどが代表的なものである。旧西ドイツでは連邦制で各州の都市配置が均衡を保っているせいか,ロンドンやパリのような大都市問題は起こらず,全体として拡大都市型の開発が盛んである。
アメリカのニュータウンは1930年代の不況対策としてのニューディールのなかでグリーンベルト型の諸都市の建設が行われたが,第2次大戦後は幹線道路を利用した一戸建ての郊外住宅団地が民間企業により各地で建設された。47-69年の間に,20州にわたって63のニュータウンが開発され,このうち50%がカリフォルニア,アリゾナ,フロリダの3州に集中し,計画人口は総計347万人,平均6万人にもなっている。それらの規模も500~2万ha,平均5000haとなっている。代表的ニュータウンとしてワシントンの近郊にある人口7万5000人のレストンと人口11万人のコロンビアがある。これらはいずれも住宅中心のニュータウンである。1960年代後半に連邦政府がニュータウン建設に積極的助成策をとるようになった。73年時点で15のニュータウンが承認され,計画人口は86万人に達した。しかし,これらのニュータウンは大部分が,母都市から不便な場所に立地しているため人気がなく,連邦政府が期待した効果をあげていない状況にある。
フランスのニュータウンは,パリおよびその他の大都市の過密化解消と地方中核都市育成を企図して計画,建設された。パリ首都圏についてみると,計画人口25万~30万人の5ニュータウンがパリの周辺10~30km圏内に立地しており,パリとは高速鉄道あるいは高速道路により緊密に連結されている。これらのニュータウンはいくつかの自立的なコミュニティから構成され,都心中枢センターから地区センターまでも含む社会的・経済的諸施設も具備している。
→田園都市 →都市計画
執筆者:佐々波 秀彦
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広義には計画的に新しく建設された都市を意味し、日本では東京周辺の多摩、横浜の港北、名古屋周辺の高蔵寺、大阪周辺の千里・泉北のように、大都市郊外に造成された新しい都市に名づけられている。しかし元来は、イギリスの地方計画で、第二次世界大戦後、新都市法New Town Actによって計画、建設された新都市をさす。ロンドン大都市計画では、1946年のスティブネージをはじめ、クローレイ、ハーロー、ヘメル・ヘムステッド、ハットフィールド、ウェリン・ガーデン・シティ(ウェルウイン)、ブラックネル、バジルトンの8都市がつくられた。その後さらに多くの新都市が生まれ、そのなかには既存の小都市を核とし、これに新しい市域を付加して建設した新都市もある。日本のニュータウンは都市周辺に建設されているので、形態的にはイギリスのニュータウンに類似するが、雇用の場が少ないので、イギリスのそれとは異なる。日本のニュータウンが建設されてから30年以上も経過し、住民の高齢化、集合住宅の建替え、諸施設の老朽化、学校の統廃合の問題などが生じている。
[山鹿誠次・菅野峰明]
『中央大学社会科学研究所編『地域社会の構造と変容――多摩地域の総合研究』(1995・中央大学出版部)』▽『福原正弘著『ニュータウンは今――40年目の夢と現実』(1998・東京新聞出版部)』▽『高橋賢一著『連合都市の計画学――ニュータウン開発と広域連携』(1998・鹿島出版会)』▽『福原正弘著『甦れニュータウン――交流による再生を求めて』(2001・古今書院)』
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…そして,1909年の都市計画および住居法において,(1)都市公共施設の整備,(2)不良住宅地区の改善,(3)新しい不良住宅抑制のための建築制限,(4)人間の居住に適さない住宅についてその持主に対する閉鎖・改善命令を規定した住居監視員制度,(5)低所得者に対する公営住宅の直接供給という住宅政策の体系をつくりあげた。 一方,1898年E.ハワードは田園都市論を提唱しニュータウンの理論的基礎を提供した。その影響を受けて第2次大戦後各国は,戦災で失われた住宅を供給するため,数多くのニュータウンを建設した。…
…一方,第2次大戦後,ロンドンを中心とする都市圏への人口および産業の集中が著しく,大都市圏を中心とする新たな都市化の段階として注目された。そのコントロールを主旨としてニュータウンの建設がなされたが,豊かな田園環境の中に産業と文化を導き調和のとれた生活空間を実現しようとするイギリス伝統の田園都市の理想は,必ずしも十分には達成されていないというのが実情であろう。 一方,南北戦争を境に急速に工業化が進んだアメリカにおいても都市の発達は著しく,旧大陸との航路に依存した東部,次いで五大湖沿岸などに工業都市が次々と形成された。…
…ハワードの田園都市は世界各国に大きな影響を与え,田園都市に類するもの,あるいは田園郊外garden suburbsが各地に建設された。またこの発想の展開によって衛星都市satellite citiesの概念が登場し,第2次世界大戦後,イギリス政府によるニュータウン政策に引き継がれた。 ハワードの田園都市とならんで,後世に大きな影響を与えたものとして,ル・コルビュジエの理想都市があげられる。…
※「ニュータウン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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