ノロ(読み)のろ(英語表記)roe

翻訳|roe

改訂新版 世界大百科事典 「ノロ」の意味・わかりやすい解説

ノロ (獐)
roe deer
Capreolus capreolus

偶蹄目シカ科の哺乳類。別名ノロジカ。長さ20cm程度の3尖(せん)の小さな角をもつ小型のシカ。ヨーロッパから中国北部,朝鮮半島にかけてのインドを除くユーラシア大陸に広く分布するが,日本にはすまない。体色は,ふつう夏毛は赤褐色冬毛灰褐色,または粘土色だが,変化に富み,ほとんど白色のものや黒色のものもある。体長110cm,肩高70cm,体重30kg前後。尾をほとんど欠き,黒い鼻と白い下あごの先の配色のとりあわせが目だつ。

 下生えの豊かな明るい林や草原に接する林縁部に単独あるいは小さな群れですむが,冬には30頭くらいまでの群れをつくる。おもに夜間活動して,草,木の葉のほか,どんぐりやブナの実などを食べる。交尾期は7~8月で,雄はその期間のみふつう特定の雌と配偶関係を結んで共に過ごす。雌は5~6月に1産1~3子,ふつう2子を生む。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ノロ」の意味・わかりやすい解説

ノロ
のろ
roe
[学] Capreolus capreolus

哺乳(ほにゅう)綱偶蹄(ぐうてい)目シカ科の動物。ノルともいう。中形のシカで、ヨーロッパ、中国、中近東と分布域が広い。地域によりいくつかの亜種があるが、大きく次の3亜種に分けられる。ヨーロッパノロC. c. capreolusは、ヨーロッパから中近東にかけて分布する。肩高60~68センチメートル。マンシュウノロC. c. bedfordiは、肩高65~78センチメートル。夏毛と冬毛の色彩的差異があまりない。中国、朝鮮半島などに分布する。オオノロC. c. pygargusは、3亜種のなかで最大で、肩高70~90センチメートル。アルタイ、アムール地方に産する。

 本種の毛色は、夏毛は赤黄色、冬毛は灰褐色晩春から初夏にかけて成獣の雄は縄張りテリトリー)をつくる。7月下旬から8月上旬の発情期に入ると、雄は雌を追い、2頭はノロの輪といわれる円を描くように走る。妊娠期間は9か月半にもなる場合があり、受精卵の着床遅延が認められている。出産期は5~6月。1産に普通2子、ときに3子、まれに4子を産む。寿命は15年ぐらいである。

増井光子


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山川 日本史小辞典 改訂新版 「ノロ」の解説

ノロ

祝女とも。沖縄の女性神役の一つ。地域祭祀の司祭者の最高位の者。ノロとは,「宣る」あるいは「祈る」という言葉に由来するものかとされる。ノロの歴史は3段階にわけて考えられる。第1は琉球国の中央集権制が確立する以前の段階に,各地域の按司(あじ)の姉妹がノロとして祭祀を司祭していた。第2は琉球王国時代で,それまでのノロが聞得大君(きこえおおきみ)を頂点とする神職組織にくみこまれるようになった段階(尚真王時代に確立)。この当時のノロは首里王府から辞令と俸禄をうけ,「公儀ノロ」と称された。第3は明治期以降の王府崩壊後。王府のノロ制度は廃止され,各地のノロの祭祀世界はノロ継承者の不在などによって形骸化していった。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ノロ」の意味・わかりやすい解説

ノロ

祝女とも書く。沖縄本島,奄美群島における公的司祭者としての神女のこと (→ユタ ) 。この地方における神女組織は,琉球王朝の確立とともに整備され,ノロは1集落ないし数集落の祭祀組織を統率した。ノロという語は,祈る,祈る人,神の意思を述べる人などの意で,9世紀頃から存在した。一般にノロは任命制で選ばれ,神衣装,銀の簪 (かんざし) ,扇,ノロ地と呼ばれる土地が与えられるが,各村ではノロの出る家柄は決っていた。ノロの住居はノロ殿内と呼ばれ,守護神として火の神を祀っていた。ノロ制度は明治初年に廃止されたが,神役名称としては今日も残っている。

ノロ
Capreolus capreolus; roe deer

偶蹄目シカ科。体長 95~130cm,体高 65~85cm。角は雄だけに生えるが,短く,普通は3枝。夏毛は赤褐色であるが,冬毛は灰色がかった褐色で,尻に白い大きな斑紋が現れる。ヨーロッパ,中国,朝鮮半島,アムール地方に分布し,低地から高地までの森林に生息する。肉は美味。

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百科事典マイペディア 「ノロ」の意味・わかりやすい解説

ノロ

ノロジカとも。偶蹄(ぐうてい)目シカ科。体長1〜1.1m,肩高64〜89cm。夏毛は赤褐色,冬毛はオリーブ褐色で,しりに大きな白斑が現れる。ヨーロッパ〜中国東北部,朝鮮半島,アムール流域に分布。疎林や低木の多い草原にすみ,朝夕1対または小群で出歩き,草や木の若芽,果実などを食べる。1腹2子前後。肉は良質で美味。
→関連項目与論島

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