スイスの女流児童文学者シュピリの作品。第一部1880年、第二部81年刊。孤児になった少女ハイジは、世を嫌い人を避けてアルプスの山の上に住むおじいさんに引き取られる。昼は山羊(やぎ)飼いの少年ペーターと花の咲き乱れる山を駆け巡り、夜はきらめく星を見ながら干し草ベッドで眠る大自然の生活。ハイジの無邪気な明るさに、偏屈なおじいさんの心も開いてくる。だが突然、病身の少女クララの遊び相手にと、都会へ連れ出された。ハイジは山への郷愁が募り、夢遊病になる。山へ帰ったハイジを訪ねてきたクララは、澄んだ空気、濃い山羊乳、ハイジたちの愛情で奇跡的に全快する。クララのおばあさんから教わってハイジの心に芽生えた神への信仰は、おじいさんの心をすっかりほぐした。美しい自然の優れた描写、素朴な人間愛、すなおな子供らしさは世界中の子供を魅了し、今もなお読み継がれている。なお邦訳書名が『アルプスの山の少女』になっているものもある。
[上田真而子]
『矢川澄子訳『ハイジ』(1974・福音館書店)』▽『竹山道雄訳『ハイジ』上下(岩波少年文庫)』
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