ハオルチア(読み)はおるちあ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハオルチア」の意味・わかりやすい解説

ハオルチア
はおるちあ
[学] Haworthia

アロエ科(またはアスフォデラ科アロエ亜科)ハオルチア属の総称。ハオルシアともよばれる。原産地は南アフリカ共和国。小形の多年生多肉植物で、葉をロゼット状に密生する。多肉葉の先が透明な「窓」になるものが多く、窓植物の代表である。花は白色筒状で小形。アロエやガステリア近縁であるが、花柱の長さが子房より短い、柱頭が花筒の3分の2より下にある、柱頭が葯(やく)より上に出ることがないなど、花の内部構造の違いがアロエやガステリアとの基本的な相違点である。この違いはハオルチアがもっぱらハチなど小形昆虫に花粉が媒介されていると考えられるのに対し、アロエやガステリアでは小形の鳥sunbirdが花粉媒介者であることによる。ハオルチアは典型的な分類困難群として有名で、研究者によって分類体系や種の同定は大きく異なる。

 多肉植物には珍しい陰性植物である。このため乾燥した丘陵の小低木の下や岩の割れ目など、あまり日の当たらない環境を好む。岩場や礫(れき)の多い、おもに日陰側の傾斜地に群落をつくり、平坦地にはほとんど生育しない。群落は一般に非常に小さく、多くは数平方メートルからせいぜい数十平方メートルで、そこに数十から数百個体が集中的に生育する。開花期は原則年1回で、2~3週間内に一斉開花する。群落を離れたところに孤立して生育するいわゆる孤立個体はほとんどみられない。また同じグループの種の場合、ある群落と隣の群落までの距離は一般に数キロメートル以上あり、各群落は非常によく隔離されている。例外はH. tessellateとH.リミフォリアlimifoliaであるが、これら2種とも主産地は南アフリカ共和国である。南アフリカ南部の小カルーとよばれる地域を中心に約300種が記載され、また毎年多数の新種が記載されている。

 ハオルチアは園芸植物として人気があり、葉に白い輪状結節がつくジュウニノマキ(十二の巻)や白いレース状鋸歯(きょし)に包まれるセタータ類がよく普及している。日本では1980年代(昭和55~64)以降、これらの実生苗から世界的に有名な品種が多数選抜育種されている。現在ではアメリカや南アフリカでも多くの優良品種が育成されている。

 生育期は秋から春である。本州中部では一般に秋~春は50%、夏は70~80%程度の遮光が必要である。用土赤玉土主体に鹿沼(かぬま)土や日向(ひゅうが)土を混ぜたものがよく使われる。灌水は他の多肉植物よりやや多めにやる。繁殖は葉挿し、株分けが一般的である。種子寿命はおおむね1年であるが、取り播(ま)きがもっとも発芽率が高い。細かな赤玉土などの清潔な用土に播種(はしゅ)し、薄く覆土する。腰水をして2週間ほどで発芽を始める。適温は20~25℃で、30℃以上だと発芽しない。発芽が一段落したら腰水を切り、通常の管理にする。小苗のうちは遮光を強くし、乾燥させないようにする。

[林 雅彦]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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