爬虫(はちゅう)綱有鱗目(ゆうりんもく)クサリヘビ科の動物。同科マムシ亜科ハブ属に含まれる有毒種である。
ハブが属するクサリヘビ科のヘビは、上顎骨(じょうがくこつ)が短く、よく発達した管牙(かんが)を有する。また、腹板はほぼ体の直径に等しい。さらに、マムシ亜科のヘビでは、餌(えさ)動物の体温を感知できるピット器官pit organ(頬窩(きょうか))を有し、東南アジアではハブ属とマムシ属が知られている。ハブ属の仲間の頭部は三角形で大きく、細い頸部(けいぶ)と明瞭(めいりょう)に区分され、背面は細かい鱗(うろこ)で覆われている。胴体は円筒状であるかまたは多少平たく、ハブのようにかなり細長いものと、ヒメハブのように太く短いものとがある。この属には40種ほどが知られており、東南アジアを中心として分布している。日本では、八重山列島(やえやまれっとう)のサキシマハブ、吐噶喇列島(とかられっとう)のトカラハブ、奄美(あまみ)・沖縄諸島のヒメハブなどが、中国南部、台湾そのほかではアオハブやタイワンハブなどが知られる。
ハブの頭部は非常に大きくて長い三角形で、吻縁(ふんえん)は鈍い。体色は、黄色の地に黒褐色の不規則な斑紋(はんもん)がある。しかし、斑紋や体色には個体および地理変異がみられ、なかには銀、赤の変異を示す個体もいる。全長は2~3メートルに達する大形種である。
[新城安哲]
ハブは琉球列島(りゅうきゅうれっとう)(南西諸島)の奄美諸島と沖縄諸島に分布しているが、すべての島に生息しているわけではなく不連続になっている。奄美大島、徳之島、伊江島、沖縄島、久米島(くめじま)など26の島々に分布する。
ハブ属のヘビは第三紀の中ごろ以降、陸橋によって台湾から琉球列島へ渡来し、広く分布していた。しかしすでに吐噶喇海峡が成立していたため、それより北には分布することができなかった。以後この分布地域の地殻変動により海面下に沈降した島や、比較的低い山のあった陸島などにはハブが生息できず、現在のような分布の状況になったと考えられている。このように、琉球列島におけるハブおよびハブ属の奇異な分布は、琉球列島の地史、過去におけるヘビ類の生態分布などに由来している。
[新城安哲]
夜行性で、日中は石垣、岩の穴、古墓などの中に潜んでいるが、夕方から活発に行動する。生息場所としては、巣穴となりうる穴の多い石灰岩地域がとくに多いようである。樹上で活動したり人家内に侵入することも多く、3月ごろから11月にかけて巣穴から出てよく活動し、この時期には咬症(こうしょう)者も多い。冬季にはサトウキビ畑に隠れている場合があり、収穫作業中の咬症がみられる。
餌はおもにネズミ類であるが、ときに鳥類、トカゲ、カエル、無毒ヘビなどを食べ、これまでに65種の脊椎動物(せきついどうぶつ)が記録されている。頭部には前述の頬窩があり、これで夜間でも餌動物を正確に探知する。毒牙は上顎に2本あり、かまれると毒液が深く注入される。毎年7、8月に平均9卵を産む。40~50日後に、幼蛇は卵歯で卵の殻に裂け目をつけてから孵化(ふか)する。
[新城安哲]
ハブ毒はほとんどタンパク質からできており、多種の酵素を含有している。その毒作用は、出血、腫脹(しゅちょう)、壊死(えし)などの激烈な局所炎症をおこすことが特徴である。すなわち、受傷局所は内出血のため暗紫色となり、強く腫(は)れる。また、筋肉組織を融解して壊死に至らしめるので、手足をかまれた場合は機能障害をおこすことも多い。治療には「ハブ抗毒素」を早期に注射する必要がある。
鹿児島、沖縄両県ではそれぞれ本種による咬症が年約400件あり、うち約1%の死亡者がいる。そのため近年、ハブの駆除を目的とした防除の野外実験や生態の研究などが行われている。なお、1910年(明治43)に野外における天敵としてマングースが移入されたが、現在までハブを防除しているとのはっきりした証拠は知られておらず、むしろ否定的な意見が出されている。
[新城安哲]
クサリヘビ科に属する危険な毒ヘビ。奄美大島,徳之島,沖縄島および周辺の離島に分布し,全長1~1.8m,最大2.3m。頭部は長三角形で大きく頸部(けいぶ)がくびれる。瞳孔は縦長で,眼の前方には1対の赤外線に敏感なピット器官がある。体色,斑紋には変異が多く,現地では色彩によって金ハブ,銀ハブ,黒ハブに区別する。
平地から山地の耕地,森林,集落周辺の地上や樹上にすみ,夜行性で,昼間は風通しのよい薄暗い場所に潜む。日没ころから行動し,ネズミ,小鳥,トカゲなどをとらえるが,ネズミを求めて家屋内にも侵入する。したがって昼間の野外作業時ばかりでなく,夜間の就寝中を含め居住区での咬症(こうしよう)被害も少なくない。ハブは興奮すると体の前半部を8字形に曲げて身構え,相手が防衛の臨界範囲に入るや,音もなくとびかかる。〈ハブに打たれる〉と表現されるとおり,重い頭部をたたきつけるようにして,毒牙を打ちこむが,このとき全身の1/2~2/3ほどがのびる。注入される毒量が多く患部に出血と壊死を起こさせる出血毒が主成分。クサリヘビ科のハブ,マムシともに出血毒のほかに,神経毒,心臓毒をはじめとする諸成分が含まれている。毒の強さはマムシがまさるが,ハブでは注入毒量が多いため,より危険である。近年では抗血清をはじめ治療法の進歩により,かつては12%に達した致命率は1%以下に減少したものの,なお毎年500~700人ほどの咬症患者(死亡は5人前後)が出ており,ハブによる有形無形の被害はきわめて大きい。南西諸島には本種以外に,宝島,小宝島にトカラハブT.tokarensis,八重山列島にサキシマハブT.elegans,そして奄美・沖縄諸島には太短いヒメハブT.okinavensisが分布するが,標高の低い隆起サンゴ礁の島には生息しない。
執筆者:松井 孝爾
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…従来のシリアルインターフェースに比べるとはるかに高速で,データ転送速度は最高12Mb/秒(1秒間に12Mビット)である。ハブと呼ばれる機器を使って,1個のUSBの口に多数の機器をつなぐことができる。1998年ころから普及しつつある。…
…入母屋の屋根は,切妻と寄棟の特徴を兼ね備えており,力強い印象を与える三角形の妻をもちながら,建物の四周に軒びさしを巡らすことによって,外壁面を保護することができる。三角形の妻は破風(はふ)とも呼ばれ,その大きさは屋根こう配とは無関係に設定できる。すなわち,破風を小さくし,その立所(たてどころ)を深くした寄棟に近い入母屋とともに,江戸時代の寺社建築のように意識的に破風を大きく構えた,切妻に近い入母屋もある。…
…檜皮葺きや柿葺きの棟は,近畿地方では瓦を積んだ瓦棟が多く,他の地方では木でつくった箱棟が多く,両端には外形が鬼瓦に似た鬼板を用いる。鬼瓦や鬼板のかわりに,円筒形の経巻(きようのまき)と呼ばれるものを3個のせた獅子口(ししぐち)が,唐破風(からはふ)などに使われる。なお,檜皮葺きや柿葺きには降棟や隅棟はなく,また神社建築では棟に堅魚木(かつおぎ)をのせ,両端に千木(ちぎ)をあげる。…
※「ハブ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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