生態分布(読み)せいたいぶんぷ(英語表記)ecological distribution

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「生態分布」の意味・わかりやすい解説

生態分布
せいたいぶんぷ
ecological distribution

環境によって決定される生物分布緯度経度に沿って生じる水平分布と,山岳の植物帯や海の深度帯のように高度や深度に沿って生じる垂直分布がある。環境よりも植物相,動物相が問題になる地理分布の対語で,群系の分布はその代表的なもの。生態分布を制限する環境要因に,気候的,土地的な無機的要因と,食物,害敵,競争者などの生物的要因がある。植物群落の陸上での分布はおもに温度と水分により制限されるが,水界での垂直分布はおもに光により制限される。哺乳類,鳥類そのほか移動性の大きい動物の分布は,すみ場所の無機的環境とともに生物的要因により制限されることが多い。日本の本州の垂直分布を見ると,標高約 700mほどまでは,シイカシなどの照葉樹林が広がり,丘陵帯と呼ばれる。標高約 1700mまでは,ブナミズナラなどの夏緑樹林が広がり,山地帯と呼ばれる。標高約 2500mまでは,シラビソコメツガなどの針葉樹林ダケカンバなどの落葉広葉樹が広がり,亜高山帯と呼ばれる。亜高山帯の上限が,森林限界である。それより上は,ハイマツコケモモなどの低木や高山植物などが生え,高山帯と呼ばれる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「生態分布」の意味・わかりやすい解説

生態分布
せいたいぶんぷ
ecological distribution

地理的・地史的要因ではなく、現在の環境要因に支配される生物の分布をいう。一般に地理的分布との区別は困難である。分布限定要因としては、非生物的要因と生物的要因がある。植物や固着性の動物の分布は、温度、降水量潮位、土壌条件といった非生物的要因の影響を大きく受け、鳥類や大形哺乳(ほにゅう)類など移動力の大きな動物の分布は、生物的要因に影響される割合が多い。巨視的にみれば、生態分布には水平分布と垂直分布との二面がある。しかし、森林草地、裸地といった生息場所に対する分布も生態分布であり、動物の体内の細菌寄生虫の分布も、微細な生態分布の例である。一般に、生態分布は他種との競争など生物的要因の支配を受けているため、それぞれの種の生理的耐性と非生物的環境とで決定される生理的な分布限界に比べて、生態分布の範囲は狭くなっていることが多い。

[谷田一三]

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