ハマスゲ(読み)はますげ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハマスゲ」の意味・わかりやすい解説

ハマスゲ
はますげ / 浜菅
[学] Cyperus rotundus L.

カヤツリグサ科(APG分類:カヤツリグサ科)の多年草。茎は基部は球茎状に肥大し、高さ20~40センチメートル。葉は根生し幅2~6ミリメートル。海岸の砂地日当りのよい砂質地に生え、関東地方以西の本州から沖縄、および世界の熱帯、亜熱帯に広く分布。名は、海浜に生えるスゲの意味である。長いストロン(走出枝)を伸ばして繁殖するため、畑や果樹園に発生すると駆除が困難である。芝生にも大きな害を与える。

[木下栄一郎 2019年7月19日]

薬用

地下のストロンの先端に生じた長さ2~3センチメートル、径1センチメートルの紡錘形の塊を、漢方では香附子(こうぶし)(古くは莎草根(しゃそうこん))と称して薬用とする。塊の表面は黒褐色で多くの細根をつけているが、それを火で焼いて調製する。質が堅く、香気のよいものを良品とする。キペレン、キペロールなどのセスキテルペンが主成分である。健胃、鎮痛、通経剤として消化不良、食欲不振、胃痛腹痛月経痛、月経不順、神経性頭痛などの治療に用いる。

[長沢元夫 2019年7月19日]


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改訂新版 世界大百科事典 「ハマスゲ」の意味・わかりやすい解説

ハマスゲ (浜菅)
coco-grass
nut-grass
Cyperus rotundus L.

カヤツリグサ科の多年草。畑や公園等の雑草として嫌われる一方,漢方薬では重要な薬草の一つでもある。細いが硬い地下茎を伸ばしてよく繁殖し,その先端と茎の基部に長さ1cm弱で卵形塊茎がある。茎は細く,高さは10~20cmで,基部に少数の細く短い葉がある。夏から秋にかけて,茎の頂に苞葉2~3枚と3~4個の枝をもった散形花序を出し,濃赤褐色で細い小穂をややまばらにつける。全世界に分布する雑草で,砂地に多いが,畑地に入ると除きにくい害草となる。

 塊茎にはデンプンのほかにセスキテルペン(炭素数15のテルペン)を含む精油があって,塊茎を乾燥したものが日本薬局方第二部の香附子(こうぶし)である。他の生薬と配合して,肝機能障害,胃痛,腹痛,通経,鎮痛の効がある。インドでは古くから薬として使われていたほか,近縁で時には栽培もされるC.esculentus L.とともに救荒食用植物として,デンプン食料にされた記録もある。
カヤツリグサ
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハマスゲ」の意味・わかりやすい解説

ハマスゲ(浜菅)
ハマスゲ
Cyperus rotundus; coco grass

カヤツリグサ科の多年草で,コウブシまたはクグともいう。ほとんど全世界に分布し,日本では関東地方以西の本州,四国,九州の海岸の砂浜,河原や日当りのよい原野に生える。細い地下茎が横に長くはい,その先端に塊茎を生じる。稈は塊茎から直立し高さ 20~30cm,基部に数枚の葉を叢生する。葉は線形でやや硬く光沢のある深緑色で,下部は葉鞘となり稈を包む。夏から秋にかけて,葉の間から花茎を出し,先端に狭線形の総包片を1~3枚生じ,その中心から数本の茶褐色の花序を出す。塊茎からひげ根を焼いて取去り,乾燥させたものを香附子 (こうぶし) と呼んで通経,鎮痙の婦人薬として用いる。

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世界大百科事典(旧版)内のハマスゲの言及

【佐敷[町]】より

…旧跡として,尚巴志が按司であったときの居城であった佐敷上城(うえぐすく)がある。富祖崎海岸一帯のハマジンチョウ(ジンチョウゲに似た常緑植物)は県の天然記念物に指定されている。【堂前 亮平】。…

※「ハマスゲ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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