日本大百科全書(ニッポニカ) 「スゲ」の意味・わかりやすい解説
スゲ
すげ / 菅
[学] Carex
カヤツリグサ科(APG分類:カヤツリグサ科)スゲ属植物の総称。非常に大きな群で全世界に約2000種ほど知られ、東アジアと北アメリカに多い。日本には210種ほど自生する。葉や稈(かん)はイネ科植物に似て、イネ科とよく混同されるが、普通は稈は三稜(さんりょう)形で稈の内部は詰まり、葉は根生する。花は単性で鱗片(りんぺん)の腋(えき)につき、花被(かひ)はない。雄花は3本の雄しべからなり、雌しべは果胞とよばれる壺(つぼ)状の器官に包まれる。縁(へり)が合着せず果胞が壺状にならなかったり、一部合着するものは、ヒゲハリスゲ属Kobresiaとして別属にされる。小穂は多数の花が螺旋(らせん)状に配列したもので、多くの種では雄小穂と雌小穂に分かれている。マスクサ、ナキリスゲ、ハナビスゲ(ジュウモンジスゲ)などでは一つの小穂に雄花と雌花がつく。いずれにしてもスゲ属植物は雄花と雌花が同一個体につく雌雄同株であるが、コウボウムギ、エゾノコウボウムギ、ヤリスゲ、カンチスゲは雌雄異株である。円錐(えんすい)花序で頂部に雄花、基部に雌花からなる小穂をつける群は熱帯アジアに多く、もっとも原始的な群である。日本ではハナビスゲ(ジュウモンジスゲ)やアブラシバが知られている。カンスゲやアオスゲは単性の小穂が総状に配列し、頂小穂は雄花からなる。日本のスゲの多くはこの群に属している。マスクサでは花序はさらに単純化して穂状花序となり、花序中に雄花と雌花がつく。スゲ属植物のなかではもっとも進化した群と考えられ、日本に約二十数種知られている。
スゲはイネ科に比べ利用度が少なく、笠(かさ)や蓑(みの)、縄などをつくるのに利用されるにすぎない。地方によって使われる種は違うが、福島県只見(ただみ)地方ではカサスゲで笠を、ミチノクホンモンジスゲで蓑をつくる。斑(ふ)入りのものは庭に植えられ観賞用にされるものも多い。また家畜の好飼料になるものも多い。現在では人間の生活にはあまり縁がないが、古代日本社会では田の神の宿る植物としてたいへん神聖視された。菅(すげ)と清(すが)は同じ語源に由来するといわれる。『万葉集』ではスゲはハギ、アシに次いで多く49首も詠まれている。
[木下栄一郎 2019年7月19日]