ハマボウ(読み)はまぼう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハマボウ」の意味・わかりやすい解説

ハマボウ
はまぼう / 浜朴
[学] Hibiscus hamabo Sieb. et Zucc.

アオイ科(APG分類:アオイ科)の落葉小高木。葉は長柄があって互生し、倒卵状円形で長さ3~6センチメートル、先はわずかにとがり、基部は心臓形、縁(へり)に細かい鋸歯(きょし)があり、厚い紙質で裏面に白毛を密生する。夏、枝先に径約5センチメートルの漏斗(ろうと)状の5弁花を1、2個腋生(えきせい)する。花色は黄色で底部は濃紅色。小包葉は8~10枚、基部は癒合し、細毛がある。萼片(がくへん)は5枚。雄しべは多数あって単体をなし、これを貫いて雌しべの5花柱が抽出し、柱頭暗紅色を呈す。蒴果(さくか)は卵形でとがり、下部に宿存萼がある。海浜に生え、関東地方南部以西の本州から九州、奄美(あまみ)大島に分布する。名は、浜に生えるホオノキの意味。防潮林として植栽する。近縁オオハマボウはハマボウに似るが、葉は円心形で大きく、長さ10~15センチメートル、全縁か波状の鋸歯がある。海岸に生え、小笠原諸島、屋久島(やくしま)、種子島(たねがしま)以南、および東南アジア、インド、オーストラリア、太平洋諸島に広く分布する。

[古澤潔夫 2020年4月17日]

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改訂新版 世界大百科事典 「ハマボウ」の意味・わかりやすい解説

ハマボウ
Hibiscus hamabo Sieb.et Zucc.

日本の本州南部,四国,九州,琉球原産のアオイ科の低木で,ときに観賞用に庭園に植えられるほか,防潮林とされる。高さ3~5mになり,若枝,若葉に絹毛を有する。葉は円形から心臓形で,フヨウよりも小さく,先端はとがる。花は直径7~10cm,黄色で7~8月に咲く。通常,葉腋(ようえき)に単生するが,ときに枝の先に群がって咲くことがある。小苞片は8~10枚,萼は途中で折れて5片に開く。果実は楕円形で先端はとがる。種子は腎臓形で無毛。強い硬実性の種子に傷をつけて,春にまく。開花には2~3年を要する。山間部や関東以北では戸外では越冬できない。

 オオハマボウH.tiliaceus L.(英名coast cotton tree,yellow mallow tree)は熱帯性で,本種とは分布域や性質を異にする。両種とも強い樹皮の繊維をロープ,敷物,織物等に利用する。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハマボウ」の意味・わかりやすい解説

ハマボウ(浜朴)
ハマボウ
Hibiscus hamabo

アオイ科の落葉低木で,神奈川県以西,四国,九州,沖縄にかけての海岸に生える。高さ2~3mである。葉は円形で厚く,長さ 5cm内外で葉柄がある。夏に,上部の枝の葉腋に1個の黄色花をつける。1日花で朝開いた花は夕方にしぼんで落花する。萼は5裂し,花は螺旋状に巻いた5枚の花弁から成り,各花弁の基部に近いところは紫褐色をしている。多数のおしべは癒合して一体となり,長い柱をつくって花の中央に立つが,めしべはこの柱を内部から貫いて柱頭が先端に突き出す。 蒴果は円錐形で長さ 3cm。樹皮をさらして繊維をとり,漁網や縄をつくった。南西諸島や小笠原諸島などの海岸には,近縁の高木であるオオハマボウ H. tiliaceusが自生している。

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百科事典マイペディア 「ハマボウ」の意味・わかりやすい解説

ハマボウ

アオイ科の落葉低木。本州(神奈川以西)〜九州の暖地の海岸にはえる。葉は円形で,裏面には黄灰色の毛が密生,縁には鋸歯(きょし)がある。7〜8月,枝先や葉腋に径7〜10cmの黄色5弁の大型花を開く。中心部は暗紅色。おしべは多数あり,合着する。果実は卵形で10〜11月,黄褐色に熟し,5裂する。
→関連項目ハイビスカス

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