ヨーロッパに広く分布する鍵盤(けんばん)付きのリュート属擦弦楽器。ハンドルで木の円盤を回して弦をこすることで音を出し、鍵操作で鍵盤楽器的に音高を変える。その元となったオルガニストルムorganistrum(ラテン語)は、10世紀には文献に現れ、バイオリンのような外観だが、全長が1.5~1.8メートルあり、2人が膝(ひざ)にのせて、ハンドル操作と鍵操作とを分担していた。これは教会や修道院で用いられたが、13世紀にはオルガンにとってかわられ、小形化されて、1人で演奏できる、より一般的、民衆的な楽器となり、名称もシンフォニアなどと変わった。教会や上流社会では15世紀ごろからこれを「悪魔の楽器」「乞食(こじき)の楽器」とよんで蔑視(べっし)したため一時衰退したが、さらに改良が進み、呼称もハーディ・ガーディなどとなった。18世紀にはフランス社交界で一時的に流行したが、現在ではおもに大道芸人用の楽器となっている。
[前川陽郁]
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