ハーディガーディ(読み)はーでぃがーでぃ(その他表記)hurdy-gurdy 英語

デジタル大辞泉 「ハーディガーディ」の意味・読み・例文・類語

ハーディ‐ガーディ(hurdy-gurdy)

ハンドル付きの木製円盤を回転させて弦をこする擦弦楽器共鳴胴に付けられた鍵盤けんばんを押さえて旋律を奏する。10世紀ごろヨーロッパに現れ、13世紀までは教会などでも用いられたが、それ以後は、おおむね民俗楽器として用いられた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハーディガーディ」の意味・わかりやすい解説

ハーディ・ガーディ
はーでぃがーでぃ
hurdy-gurdy 英語
vielle (vièle) à roue フランス語
Leier ドイツ語
symphonia ラテン語

ヨーロッパに広く分布する鍵盤(けんばん)付きのリュート属擦弦楽器。ハンドルで木の円盤を回して弦をこすることで音を出し、鍵操作で鍵盤楽器的に音高を変える。その元となったオルガニストルムorganistrum(ラテン語)は、10世紀には文献に現れ、バイオリンのような外観だが、全長が1.5~1.8メートルあり、2人が膝(ひざ)にのせて、ハンドル操作と鍵操作とを分担していた。これは教会や修道院で用いられたが、13世紀にはオルガンにとってかわられ、小形化されて、1人で演奏できる、より一般的、民衆的な楽器となり、名称シンフォニアなどと変わった。教会や上流社会では15世紀ごろからこれを「悪魔の楽器」「乞食(こじき)の楽器」とよんで蔑視(べっし)したため一時衰退したが、さらに改良が進み、呼称もハーディ・ガーディなどとなった。18世紀にはフランス社交界で一時的に流行したが、現在ではおもに大道芸人用の楽器となっている。

[前川陽郁]


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改訂新版 世界大百科事典 「ハーディガーディ」の意味・わかりやすい解説

ハーディ・ガーディ
hurdy-gurdy

擦奏弦楽器の一種。弓の代りに縁に松脂(まつやに)を塗った円板を回転させて弦を摩擦し,音の高さは定位置に取り付けられた木片を動かして弦にあてて決めるようになっている,いわば器械化された楽器。発生も名称の由来も不明であるが,10世紀ころからヨーロッパに存在し,教会や修道院で使用された。15世紀ころからは民間の楽器となり,現在もなお東欧やウクライナ,ベラルーシなどに残っている。辻音楽師の楽器でもあった。
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百科事典マイペディア 「ハーディガーディ」の意味・わかりやすい解説

ハーディ・ガーディ

ヨーロッパに広く分布する機械的な擦弦楽器。リュート型の共鳴胴をもち,右端にハンドルがつく。右手でハンドルを回すと松脂を塗った木輪が回転して弦をこすり,音がでる。鍵盤がついており,左手の指で鍵を押して旋律を奏する。ふつう旋律弦2本,ドローン(持続音)弦2〜4本。フランスのビエル・ア・ルなど,各地でさまざまな名称がある。大道芸人がよく使う民俗楽器。弓で奏する変種はニッケルハルパnyckelharpaと呼ばれ,スウェーデンに残っている。
→関連項目リラ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハーディガーディ」の意味・わかりやすい解説

ハーディ・ガーディ
hurdy-gurdy

擦弦楽器の一種。棹のないリュートのような形で,ロジン (松やに) を塗った木の円盤をハンドルで回して演奏する。弦の数は一定しないが,簡単なキーを押えて旋律を奏する高音の複弦と普通2~4本のドローン弦をもつ。 10~13世紀には教会音楽に用いられ,13世紀頃から世俗音楽に用いられるようになった。 20世紀中頃までは中部フランスを中心にヨーロッパの各地で使われていた。

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