旧ソ連邦の中で,とくにロシア,ベラルーシ,ウクライナで広く使用されている撥弦楽器。3弦で,フレットのついた棹と三角形の共鳴胴をもつ。右手の指先で弾いて演奏する。西アジア一帯にある小型で卵形に近い胴をもつ弦楽器タンブールの流れをくむキルギス,カザフなどのドンブラdombraが直接の前身楽器である。独特の三角形の胴はカザフスタンをはじめ旧ソ連南部の弦楽器にすでに見られたが,農民の楽器であったために,18世紀には平面の板を組み合わせて作ることができる,より単純な形となって現在のバラライカが生まれた。19世紀末にはアンドレーエフVasilii Vasil'evich Andreev(1861-1918)らによって改良され,6種類の大きさからなるバラライカが作られ,バラライカの楽団が生まれ,その後に円形の胴をもつ撥弦楽器ドムラdomraを加えた。
執筆者:郡司 すみ
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ロシア、ウクライナのリュート属撥弦(はつげん)楽器。平たい三角形の胴が特徴的で、三角形の一つの頂点からフレット付きの長い棹(さお)が伸びている。3本の弦はガット製または金属製で、胴の下端から張られる。表板上には駒(こま)と小さな響孔が設けられている。現在では音域の異なる大小6種類の楽器が整えられており、もっとも小さいものと大きなもの二つが4度間隔、ほか4種は低音2弦が同度、残り1本が4度上に調弦される。たとえば、もっとも中心的な楽器でE4―E4―A4である。右手の指先で直接はじいて演奏し、独奏や伴奏のほか各種バラライカの合奏にも用いられる。この楽器は、リュート系のドムラdomraから18世紀に生まれ、当初は2本弦であったが18世紀のうちに3本弦になった。
[前川陽郁]
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