改訂新版 世界大百科事典 「バンクス」の意味・わかりやすい解説
バンクス
Joseph Banks
生没年:1743-1820
イギリスの博物学者。科学上の業績によるよりも,科学研究の組織者,パトロンとして知られる。オックスフォード大学に入るが,学位をとらずに出る。少年期より植物研究に志し,そのため幾度か探検旅行に出かける。キャプテン・クックの第1回航海(1768-71)に,植物学者ソランダーD.C.Solander,画家などを引き連れて参加した。オーストラリアなどから,ヨーロッパ人にとって未知の動植物を多数採集して帰還し,一躍名声を博した。ローヤル・ソサエティの会長を長く務め(1778-1820),保守的ではあったが,ローヤル・ソサエティの地位を国内外において高めるのに貢献し,イギリス科学界をリードした。リンネ学会の設立者の一人でもある。親交を結んでいたジョージ3世を説得して,キュー植物園を世界中から収集された植物の研究センターとした。輸入品であった茶をインドで栽培することを提言するなど,植民地経営における植物研究の重要性を認識していたのである。また,オーストラリアのシドニー南部のボタニー湾を囚人植民地とすることを提案し,実現された。
執筆者:下坂 英
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報