バントゥ語族(読み)ばんとぅごぞく(英語表記)Bantu

翻訳|Bantu

日本大百科全書(ニッポニカ)「バントゥ語族」の解説

バントゥ語族
ばんとぅごぞく
Bantu

「バントゥー語族」とも表記する。アフリカ中南部、すなわちカメルーンとケニアを結ぶ線より南の広大な地域に分布する数百の言語からなる語族。それらの言語の間に親族関係が存在することは、証明する必要がないほど明白である。その祖地とはカメルーンとナイジェリアの国境地帯であるとする説が有力である。その多くの言語で「人々」をバントゥ(バントゥー)というためにこう名づけられている。バントゥ諸語の多くは部族語で、なかには消滅寸前のものもあるが、逆にスワヒリ語(タンザニアなど)のように、数千万の話し手人口を有する共通語もある。

 バントゥ諸語の大半に共通する特徴は、名詞がかなりの数のクラスに分かれ、形容詞、指示詞(「この」などにあたるもの)、所有代名詞、所有辞(「の」にあたるもの)、数詞、述語動詞など名詞と直接の関係にたつものが、対応する名詞がどのクラスに属するかによって、形の一部を変える(とくに語頭において)という「文法的呼応」の存在である。西欧語の性(ジェンダーgender)の複雑なものと思えばよいが、自然の性は関与しない。名詞は接頭辞と語幹からなるのが一般的で、接頭辞をみるとその名詞の属するクラスがほぼわかる。単数、複数の区別があるが、単数名詞(または複数名詞)の接頭辞をみると、対応する複数名詞(または単数名詞)の接頭辞がわかる場合が多い。語幹は単複共通であるのが一般的である。述語動詞の構造をみると、動詞語幹に前接する各種接辞が豊富で、接尾辞は少ない。ただし、派生形は接尾辞を用いてつくられている。形容詞といえるものは数少なく、前置詞もあるが少数である。語順は英語などのそれに似ているが、名詞に対する修飾語は名詞のあとにたつのが一般的である。音韻面をみると、いわゆる開音節が圧倒的で、アクセントは高低アクセントである(ただし、スワヒリ語、タンザニアのザラモ語、ニャキュサ語などは一型化している)。

 バントゥ諸語の場合、部族名と言語名がほぼ対応しているので、きわめてよく似たもの(日本の隣接方言間の差異しかないもの)でも、二つの違った名称が与えられることがあるが、同じ距離を隔てて存在する二言語(方言)を比較すれば、日本語よりバントゥ諸語のほうがずっと差異が大きいといえよう。また、東部バントゥ諸語と西部バントゥ諸語(カメルーン、ガボン、コンゴ共和国などの言語)の間の差異はかなり大きいように思われる。

 次に、すでに触れたものを除いて、主要なバントゥ諸語をおもに話される国の名とともにあげる。ドゥアラ語、エウォンド語(以上カメルーン)、ファン語(ガボン)、テケ語(コンゴ共和国)、リンガラ語、コンゴ語、ヤンス語、モンゴ語、テテラ語、バンギ語、レガ語、ルバ語(以上コンゴ民主共和国〈旧ザイール〉)、キンブンドゥ語、ウンブンドゥ語(以上アンゴラ)、ヘレロ語、オバンボ諸語(ナミビア)、ルワンダ語(ルワンダ)、ルンジ語(ブルンジ)、ガンダ語(ウガンダ)、ルイヤ語、キクユ語、カンバ語(以上ケニア)、スクマ語、ニャムウェズィ語(以上タンザニア)、ニャンジャ語、ヤオ語(以上マラウイ)、マクア語、ツォンガ語(以上モザンビーク)、ショナ語、ンデベレ語(以上ジンバブエ)、ベンバ語、トンガ語、ロズィ語(以上ザンビア)、ツワナ語(ボツワナ、南アフリカ)、ズールー語、コサ語、ペディ語(以上南アフリカ)、ソト語(レソト)。

 バントゥ諸語の研究はアフリカの言語のなかでは進んでいるほうであるが、それらの比較研究による分岐の歴史の推定は今後の研究にまつこと大である。また、バントゥ語族と他のアフリカ諸語との関係であるが、アメリカのグリーンバーグJ. H. Greenbergは、バントゥ諸語を従来セミ・バントゥ諸語などとよばれてきた諸語(おもにナイジェリア)とともに、バントイドに属さしめ、さらにそれをベヌエ・コンゴ諸語、ニジェール・コンゴ語派を経てコンゴ・コルドファン語族(ニジェール・コンゴ語族)にまとめあげているが、方法論的にやや粗雑であり、証明しえたといえるものではない。ただし、そうした可能性は一概に否定することはできず、今後の研究がまたれるところである。

[湯川恭敏]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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