(読み)カン

デジタル大辞泉 「管」の意味・読み・例文・類語

かん【管】[漢字項目]

[音]カン(クヮン)(呉)(漢) [訓]くだ
学習漢字]4年
〈カン〉
くだ。また、くだ状の容器。「気管血管信管土管導管配管試験管真空管
吹き鳴らす楽器。「管弦管楽器金管木管
筆の軸。筆。「彩管筆管
視野の狭いこと。「管見
担当の範囲を取り締まる。「管下管轄管掌管制管理移管主管所管保管
「管理」の略。「管財/食管・選管入管
〈くだ〉「手管
[名のり]うち・すげ
[難読]煙管キセル只管ひたすら

くだ【管/×筟】

細長い円筒形で中が空洞になっているもの。「―を通して水を送る」
はたの横糸を巻いてに入れる道具
糸繰り車の紡錘つむに差して糸を巻きつける軸。
管狐くだぎつね」の略。
管の笛」に同じ。
「吹きせる―の音も」〈・一九九〉
[類語]かんパイプチューブホース

かん〔クワン〕【管】

[名]内部がからで筒状のもの。くだ。「ガスの
[接尾]助数詞。笛・筆など、くだ状の物を数えるのに用いる。「いっかんの笛」
[類語]くだパイプチューブホース

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精選版 日本国語大辞典 「管」の意味・読み・例文・類語

くだ【管・

  1. 〘 名詞 〙
  2. 竹、木、金属、ゴムなどの、円筒形で、中がうつろなもの。
    1. [初出の実例]「家にくだといふ小竹のよを多く散らしおきて」(出典:古今著聞集(1254)一六)
  3. (はた)を織るとき、緯(よこいと)を巻いておいて、梭(ひ)に入れる道具。
    1. 管<b>②</b>〈和漢三才図会〉
      〈和漢三才図会〉
    2. [初出の実例]「雁がねの羽風を寒みはた織りの管子(クダ)巻く音のきりきりとする」(出典:元祿版本新撰万葉(893‐913)上)
  4. 糸繰車の紡錘(つむ)にはさんで糸を巻きつける小さな軸。〔日葡辞書(1603‐04)〕
  5. くだ(管)の笛」の略。
    1. [初出の実例]「大角・小角(クタ)、鼓・吹〈略〉の類は私の家に存(お)くべからず」(出典:日本書紀(720)天武一四年一一月(北野本訓))
    2. 「吹き響(なせ)る 小角(くだ)の音も 敵みたる 虎か吼ゆると」(出典:万葉集(8C後)二・一九九)
  6. 農機具の一種。刈り取った稲をこく道具。〔大和耕作絵抄(1688‐1704頃)〕
  7. くだぎつね(管狐)」の略。

かんクヮン【管】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 中が空洞になった、細長い棒状のもの。くだ。つつ。「ガス管」「水道管」 〔荘子‐秋水〕
    2. 筆の軸。また、筆。〔詩経‐邶風・静女〕
    3. くだで作った楽器。金管楽器、木管楽器の区別がある。笛、笙(しょう)、篳篥(ひちりき)などの類。管楽器。
      1. [初出の実例]「管を吹き絃を弾き、鼓を打ち、功を歌ひ、徳を舞ふ」(出典:栄花物語(1028‐92頃)音楽)
      2. [その他の文献]〔詩経‐商頌・那〕
    4. 笛の一種。穴の六つあるもの。一説に、小さい笛で、二つをあわせて吹くもの。
    5. 前装銃に用いる雷管。小銃の火門に、雷薬をつけて被らせたもの。銅製で、打金で打って火を発す。
    6. 権限によって支配すること。支配されること。また、その範囲。
      1. [初出の実例]「官に怕(おそ)れずして管に怕れよ」(出典:読本・椿説弓張月(1807‐11)前)
  2. [ 2 ] 〘 接尾語 〙 管楽器、筆など、くだで作られたものの個数を数えるのに用いる。
    1. [初出の実例]「兎毛筆七管。鹿毛筆二管」(出典:延喜式(927)一三)

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改訂新版 世界大百科事典 「管」の意味・わかりやすい解説

管 (くだ)

中空の物体で,長短の差はあるが,比較的その径に比して長さの長いものを総称していう。管(かん),チューブtube,パイプpipeなどともいう。材質は生体から金属まで多岐にわたっており,ゴムや布などでつくられた柔軟なものはホースhoseと呼ばれる。一般に,物質の輸送路として,また容器としての機能を果たしているが,木管楽器や金管楽器における管の使い方などは変わった機能として興味をそそられるものの一つである。植物や動物は,自然に備わった管を主体とする諸器官において,物質交換やエネルギー交換などの生理作用を営んでいる。素焼きの管である土管は,近年コンクリートのヒューム管にとってかわられてしまったが,簡単な排水路において長い間利用されてきた。金属管としては鉛管が始まりであり,上下水道の給排水,化学的に活性の強い物質の移動に利用されている。量的にそして用途が多いのは鉄管と呼ばれる鋼管である。大は建物の外壁から,小はステンレス製の注射針まである(金属管)。

 素焼きや,ある種の高分子ポリマーを用いて管をつくると,その半透性を利用して,用途の面で非常に大きな可能性がつくり出される。アセチルセルロース芳香族ポリアミドなどの半透膜を利用した逆浸透法と呼ばれる海水淡水化技術などは,その最も新しい応用例の一つである。また,ヒートパイプheat pipeと呼ばれる特殊な管もある。これはアルミニウム,銅,ステンレスなどの金属管の中に,大きな気化熱をもち,しかもその蒸気の拡散速度の大きな熱媒体(フロンアンモニアなど)を閉じ込めたもので,この管は全体として非常に大きな熱拡散能(銅の千数百倍)をもつ物体となる。熱媒体はパイプの一端(高温部)で蒸発して他端(低温部)に移り,そこで放熱,凝縮して再び高温部に還流するのであるが,毛細管をこの内部に設ければ,毛細管現象によってこの還流性能を高めることができる。
執筆者:

(1)円管の流れ まっすぐな円管は管路として最も広く使われているので,これを例にとって管路の流れを説明しよう。円管を流れる水,油などの液体や,空気,蒸気などの気体(総称して流体)の量は,体積流量Q(単位時間当りに流れる体積)で表される。これが内径d(断面積A=πd2/4)の円管いっぱいを一様に流れるとすると,そのときの速度ū(断面平均速度)は,ūQ/Aで計算される。しかし実際には,管壁との摩擦によって壁近くでは遅く,管の中央で最も速く流れる。その速度分布は,流れが層流か乱流かによって大きく変化する。平均流速ū,内径d,流体の密度ρ,流体の粘性率μから計算されるレーノルズ数Re=ρūd/μが小さい(約2300以下)ときは,管内の流れは層流となり,図のaに示すように放物線状の速度分布となる(最大速度は平均速度の2倍)。またこの流れに細い注射針の先からインキや煙のような目印となる流体(トレーサー)を注入すると,それは周囲の流体と混ざることなく一直線に下流に向かって流されていく。一方,平均流速をあげてレーノルズ数を大きくしていくと,流れはやがて乱流に変わり,注入されたトレーサーは周囲の流体と急速に混合して,管いっぱいに広がっていく(図のb)。このように乱流とは,流れが大小の不規則な塊となって混合しながら流れる状態をいう。乱流になったときの速度分布は比較的平たんとなり,最大速度は平均速度の1.2~1.3倍程度となる。毛細管のような細い管や,原油のような粘りの強い(粘性率の大きい)液体が流れる管の中では層流が実現されるが,水道管,空調配管,工場におけるプラント配管などの流れは,ほとんどの場合乱流となる。

(2)円管の圧力損失 円管を流れる流体は,壁との摩擦によって徐々に圧力が低下する。換言すれば,管路に流体を流すためには,摩擦に打ち勝つ圧力をかけねばならない。長さlの区間における圧力降下p1p2は,管内面の粗さ(表面粗さ)によっても変化する。表面粗さは本来不規則なものであるが,それと等しい抵抗効果をもつ粒径のそろったサンドペーパーを考え,その粒径εで粗さを代表させるのがふつうである。この場合,圧力降下はp1p2=λ(l/d)(ρū2/2)の式によって求める。上式中のλは,レーノルズ数Reと相対粗さε/dによって決まる比例定数管摩擦係数と呼ばれ,多くの実験結果を整理して得られた線図から読みとる。レーノルズ数が小さい層流域では,圧力降下は表面粗さと無関係に決まり,そのときの管摩擦係数はλ=64/Reによって求められる。表面粗さεは,コンクリート管で0.3~3mm,鋳鉄管で0.26mm,亜鉛引き鉄管で0.15mm,鋼管で0.05mm程度であるが,使用時間の経過につれて,さびや水あかが付着して粗さが急増するので,経時変化をあらかじめ考慮する必要がある。

(3)円管以外の圧力損失 楕円管,矩形管,三角形管などの円管以外の直管の圧力降下は,近似的にはそれと等価な直径の円管とみなして計算することができる。等価直径deqは,それぞれの断面の断面積Aと周の全長Uを用い,deq=4A/Uによって計算される。また実際の配管を行うには,直管どうしをつなぐための継手,管軸を曲げるための曲管,管を分岐させるためのT字管,Y字管,十字管など,さまざまな形状の管路要素(管継手)が必要である。一例として流れの方向を90度変化させる曲管(エルボー)をとると,とくに内側を通る流れには大きな剝離域と偏流を生じ,直管に比べてはるかに大きな圧力損失を生ずる。これは,分岐や合流を目的とするT字管においても同様である。このため,配管の圧力損失を見積もるに際して,直管以外の要素についても十分留意する必要がある。
執筆者:



管 (かん)

(くだ)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「管」の意味・わかりやすい解説

管(くだ)
くだ

中空の細長い管。パイプpipe、チューブtubeともいう。通常、円形断面のものが多いが、その他の形状もある。主として気体・液体・粉の輸送、電線などを屋内・地中に配線するときの保護用にも利用される。水道管、ガス管など日常きわめて広範囲に使われ、各種工業用施設にも数多く使われている。このほか管は、曲げに対する抵抗が大きいので、構造物や機械の構成材料、電車内の柱、吊革(つりかわ)を取り付ける横棒にも利用されている。

 材質には金属と非金属とがある。前者は鋼管、鋳鉄管、銅管、鉛管、アルミニウム管などで、後者はゴム管、木管、ガラス管、陶管、石綿スレート管、鉄筋コンクリート管、碍管(がいかん)、合成樹脂管(ビニル管)などである。

 鋼管は、薄板を曲げて溶接あるいは鍛接してつくられた継目鋼管と、棒材を圧延したり引き抜いてつくった継目なし鋼管とがある。継目なし鋼管は、水圧・油圧が加わるところ、ボイラーなどに使用されている。鋳鉄管は鋼管よりも重く、強度の点でも鋼管より劣るが、安価で耐食性もよいところから、水道・ガス・廃水など地中に埋設する場合に多く使用されている。銅管は耐食性に優れ、たわみに対する性質もよいため、化学工業用や家庭内の給湯用の管、さらに熱伝導もよいのでボイラーその他の熱交換器用にも広く使われている。銅管の一種黄銅管も同じような性質をもっているので、復水器・熱交換器として使用される。アルミニウム管は軽く耐食性もよいので、航空機などの配管に適している。鉛管は耐食性がよいのと軟らかく曲げやすい特長があるので、水道管として利用されているが、ビニル管の普及につれて水道用としての使用は減少の傾向にある。

 ビニル管は軽く、耐食性にも富んでいるうえ、安価で接合も容易なため、使用範囲は今後さらに広まっていくであろう。ゴム管は屈曲自由で、ゴムホースとよばれ、送水・散水用として使われている。鉄筋コンクリート管は一般にヒューム管といわれ上下水道用に、石綿スレート管はエタニット管とよばれ水道用に、下水用には陶管も使われている。電気の引込み線などの絶縁用には碍管が、繊維機械用などには木管が使用されている。特殊なものとして、金属の薄板を螺旋(らせん)状に組み合わせたたわみ管というのがあり、可動部分の油輸送などに使用される。

 液体や気体を輸送する管は、その中を流れる流体の量・物性・摩擦抵抗・温度などを考えて合理的に配管設計をしなければならない。管路はかならずしも直線状ではなく、途中で管を曲げたり、太さの異なる管を使用しなければならないこともある。管と管とを接続するには管継手(くだつぎて)を使用する。

[中山秀太郎]



管(かん)
かん

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百科事典マイペディア 「管」の意味・わかりやすい解説

管【くだ】

パイプとも。中空で細長い部品の総称。主として気体,液体,ときには固体の輸送路として利用されるが,構造物の部材にも用いる。用途が多種多様なため,鋳鉄管,鋼管をはじめ,非鉄金属,非金属製など材質は広範囲にわたる。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【管】より

…中空の物体で,長短の差はあるが,比較的その径に比して長さの長いものを総称していう。管(かん),チューブtube,パイプpipeなどともいう。材質は生体から金属まで多岐にわたっており,ゴムや布などでつくられた柔軟なものはホースhoseと呼ばれる。…

※「管」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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