シャコンヌとともにバロック時代に特有な変奏曲形式として知られるもので,多くは荘重な3拍子である。何より特徴的なのは,たいていの場合4小節とか8小節の短い旋律が何度となくバスで繰り返され,繰り返されるごとに上声部が別の旋律となって和声を重ねていくという形の変奏曲であることである。したがって繰返しの切れ目がはっきりせず,音楽は切れ目なしに流れるので,連続的変奏曲ともいわれる。なお,シャコンヌとどう違うかの問題もいろいろ論議されてきたが,バロックの作曲家たちはその二つの名称を無差別に使ったと考えなければならない。しかし,J.S.バッハのオルガンの《パッサカリア》(BWV582)では,はっきりとした旋律が認められ,一方,バッハの《無伴奏バイオリンのためのパルティータ》(BWV1004)の終楽章のシャコンヌでは,旋律よりはむしろ和声進行が繰り返されるというのは,後期バロックにおけるパッサカリアとシャコンヌの間にみられる一般的な相違にも通ずるということもできる。
執筆者:東川 清一
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17世紀のスペイン、イタリアで流行した舞曲。バロック時代に純器楽曲としてしだいに様式化された。遅い三拍子で、4~8小節の主題(多くの場合短調)が全曲を通じて反復される変奏曲形式をとる。主題はおおむね固執低音(バッソ・コンティヌオ)としてバスに置かれるが、曲中で上声部に移されることもある。シャコンヌはパッサカリアに類似しているが、主題旋律の反復より、その旋律の基礎をなす一定の和声パターンの反復を中心にしている。このパッサカリアは、バロック時代にはとくにドイツとフランスを中心に作曲された。ドイツではオルガン用に書かれることが多く、なかでもJ・S・バッハのハ短調の作品(BWV582)は有名である。また、後の時代ではブラームスの交響曲第四番の最終楽章(作品98。1884~85)やウェーベルンの作品(作品1。1908)などが知られている。
[寺本まり子]
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…オルガン曲の中には,一方に華麗な演奏技術を駆使する〈トッカータとフーガ〉〈前奏曲(幻想曲)とフーガ〉などがあり,他方にはルター派教会音楽の源泉たるコラールを用い,内面的な表現を特徴とする〈コラール前奏曲〉〈コラール変奏曲〉などがある。さらに3声書法を1個のオルガン上で実現した6曲の《トリオ・ソナタ》(BWV525~530),1個の低音主題による構築的な変奏曲《パッサカリア(とフーガ)》(BWV582)もバッハ様式の優れた例である。 クラビーア(チェンバロまたはクラビコード)曲には,元来教育を目的とした《インベンション》や《平均律クラビーア曲集》と,多彩な舞曲を配列した数多くの組曲のほか,ビバルディの協奏曲形式をチェンバロ独奏に応用した《イタリア協奏曲》,1個の低音主題に基づいて前人未到の演奏技巧を繰り広げる《ゴルトベルク変奏曲》,さらには半音階的な旋律と和声によってきわめて個性的な表現を達成した《半音階的幻想曲とフーガ》(BWV903)がとりわけ重要である。…
…ふつう変奏曲と呼ばれるのはこの型である。後者は,短い旋律断片あるいは和声的骨格が絶えまなく反復されていく中を他の諸要素が変奏されていくもので,シャコンヌやパッサカリアがこれに属する。旋律は多くの場合低音部で固執低音(バッソ・オスティナート)として反復されるが,上声部に移ることもある。…
※「パッサカリア」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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