翻訳|march
マーチの訳。集団が行進するための伴奏音楽およびその情景を描写した音楽。2拍子か4拍子が多く,はっきりしたリズムと明快な形式を特徴とする。速度・曲想は行進の目的に規定され,軍隊行進曲,祝典行進曲,結婚行進曲などさまざまな種類がある。遅いテンポによる短調の葬送行進曲はその特異な例である。行進曲の歴史は古く,文献や絵画などの資料によれば古代ギリシアにまでさかのぼることができる。16世紀になるとバッタリア(戦場音楽)の中に行進の情景を描写したものがみられる。しかし現存する楽曲は17世紀以後のものであり,ルイ14世下で軍隊行進曲を書いたリュリはその最初の作曲家のひとりである。軍隊行進曲は近代の軍隊組織とともに発展したが,吹奏楽が市民の娯楽に成長し,一方歩兵部隊の役割が減少したため,今日での機能は主として儀礼やパレードに限られ,スポーツ大会などで使用される民間用と区別しがたい。芸術音楽ではオペラなどの劇音楽で軍隊,王侯,行列,祝典の場面に好んで用いられるほか,そのような場面を喚起するものとして標題的な器楽曲に,あるいは舞曲の変種として組曲の中にも使われる。18~19世紀にはモーツァルト,ベートーベンの《トルコ行進曲》ほか,ベルリオーズ,ショパン,マーラーをはじめ多くの作曲家が,ソナタや交響曲中で行進曲に特別な意義を与えた。また行進曲王と呼ばれるスーザや《双頭の鷲の旗の下に》のJ.F.ワーグナーも有名で,《ラ・マルセイエーズ》のように,行進曲が国歌に採用された例も知られる。
18世紀にトルコの軍楽が行進曲の歴史を大きく変えたように,東洋にも行進曲に類したものはある。中国の軍楽である鼓吹(こすい)は日本にも導入され,律令などの記事によれば兵部省には鼓吹司(つづみふえのつかさ)があった。しかし詳細は明らかでなく伝承もとだえており,日本での行進曲の伝統は明治維新の洋楽移入をもって始まると考えるべきであろう。
→軍楽隊
執筆者:森 泰彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新