ラン科のクマガイソウに近縁なパフィオペディルム属Paphiopedilumの熱帯産の地生ラン。インド北部から東南アジア,さらにニューギニアまで,約50種が広く分布している。また,アメリカ熱帯には近縁で子房が3室のフラグモペディルム属Phragmopedilumが分布する。これらの諸属は以前,アツモリソウ属Cypripediumにまとめられていたので,園芸界では今でも略してシップCypとも呼ばれる。しかし,現在では東南アジア熱帯産の常緑で子房が1室のものは,パフィオペディルム属として分離されている。属名の語意は女神アフロディテの足。日本へは明治年間(1868-1912)に渡来した。
短縮していて地ぎわに直立している茎から,左右に広がる葉を4~5枚根生し,茎には緑色葉のほかに白や淡黄色の斑(ふ)が入るものがある。根は葉のつけ根から出て,褐色で数は少ない。葉のつけ根から高さ20~30cmくらいの花茎を出し,その頂部に通常は1花をつけるが,中には5~10花を総状につけ,次々に開花する種もある。花は40~50日間観賞でき,日本では冬から春に開花するものが多い。
パフィオペディルム属の野生種の多くは,栽培のために導入されている。とくに稀産種は珍重され,高価である。また多くの園芸品種が種間交配によって育成され,春咲きの鉢植え洋ランの代表的な群の一つになっている。原産地では,大部分の種が林床生で,直射日光を嫌う。冬のような日光の弱いときは,ガラス越しの日光に当ててよいが,春や秋は遮光ネット越し,夏は遮光ネット二重越しくらいの日光に当てる。水を好むため,年間を通じ植込材料の水苔が少し乾いてきたら与え,肥料は春から秋までとし,冬は7℃以上保たれる所におく。ふやすのは株分けで,適期は3~4月。
執筆者:江尻 光一
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