アツモリソウ(読み)あつもりそう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アツモリソウ」の意味・わかりやすい解説

アツモリソウ
あつもりそう / 敦盛草
[学] Cypripedium macranthos var. speciosum (Rolfe) Koidz.

ラン科(APG分類:ラン科)の多年草。根茎は短く太いひげ根が多い。茎は高さ30~50センチメートル、葉を3~5枚互生する。葉は楕円(だえん)形で長さ10~20センチメートル。6~7月、茎の頂端に1花を開く。花は紅紫色または淡紅色で径約5センチメートル、袋状の唇弁が目だつ。和名は、袋状の唇弁を平敦盛(あつもり)の母衣(ほろ)に見立てたもの。中部地方以北の本州、北海道の亜寒帯草原または疎林下に生える。本州中部の亜高山帯には花が大きく茎10センチメートルほどのホテイアツモリがある。袋状の唇弁と稔性(ねんせい)のある雄しべが2個あるのがこの属の大きな特徴である。日本産のこの属の植物には、花が黄緑色で低山に生えるクマガイソウのほか、キバナノアツモリソウコアツモリソウカラフトアツモリソウがある。

井上 健 2019年5月21日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アツモリソウ」の意味・わかりやすい解説

アツモリソウ(敦盛草)
アツモリソウ
Cypripedium macranthum var. speciosum

ラン科の多年草。北海道南部から本州中部までの山の草地に生える。地下茎は短く横にはい,地上茎は直立し高さ約 40cm。葉は長楕円形,長さ8~20cm,幅5~8cmで基部は短い鞘となって茎を抱く。4~5月頃,茎頂に小型の包葉をつけ,その先に紅紫色から淡紅色の大きな花が1個うつむいて開く。花の直径は約 5cmもあり唇弁は袋状となっている。和名は花形を平敦盛が着用した母衣 (ほろ) に見立てることに由来し,近縁クマガイソウ (熊谷草) に対立させたものである。盗掘による絶滅が懸念され,1997年国内希少野生動植物種に指定された。本州中部の山岳地帯の森林下には近縁の別種キバナノアツモリソウ C. guttatumがある。6~7月に,淡黄色で茶褐色斑点のある美しい花をつける。この種はアジア東部と北アメリカ西北の冷温帯にも分布する。

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