改訂新版 世界大百科事典 「パブリシティ」の意味・わかりやすい解説
パブリシティ
publicity
広告用語の一つで,PR活動において政府,企業,各種団体,個人などの情報源が報道機関に対してニュース素材を提供する活動のことをいう。提供の方法には,記者会見,ニュース資料の提供をはじめさまざまな方法がある。報道機関は提供された情報を自己の責任で取捨選択,ろ過,あるいはその情報をもとに取材活動を行い,ニュース価値の有無によって報道するかしないかを判断する。パブリシティは,広告とともにマスコミを利用するPRの二大広報手段であるが,広告では媒体利用が有料であるのに対し,パブリシティは報道として提供されるために費用を必要としないし,また払ってはならぬものとされる。広告が各種の法規や倫理綱領に反しないかぎり広告主の意思どおり自由に表現できるのに対し,パブリシティは,報道機関側が事実の伝達を条件とする情報の加工権があることにも大きな特徴がある。このような活動は,第2次大戦前から政官界あるいは警察の発表,さらに映画,演劇などの興行界では一般的であった。しかし,この活動が〈パブリシティ〉という言葉の下で盛んになったのは,高度経済成長が始まった1960年代以降,産業界や広告会社やPR会社が広告活動とともにパブリシティ活動に積極的に取り組むようになったことによる。一方,権力や企業が彼らにとって望ましい情報を,あたかも報道機関独自の情報であるかのごとき操作をして,世論の形成や商品の宣伝のための手段として用いる傾向も顕著になりつつある。
執筆者:小倉 重男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報