パンチャーヤット(英語表記)Pañchāyat

改訂新版 世界大百科事典 「パンチャーヤット」の意味・わかりやすい解説

パンチャーヤット
Pañchāyat

インド農村古代からある伝統的な自治機関で,名称のパンチャ(サンスクリットで〈5〉の意味)が示すとおり,5人,一般にはそれ以上の村の長老によって構成される。パンチャーヤットには村落パンチャーヤットカースト・パンチャーヤットがあり,これらは共存して機能してきた。村落パンチャーヤットは一村あるいは数ヵ村を単位として構成され,村のさまざまな問題や紛争を解決してきたが,イギリス支配とともにその機能の多くが裁判所の取扱事項とされたため,その役割は減少したといわれる。しかし独立後はインドの〈村落開発計画〉の支柱として法制化され,政府の援助もとに,環境衛生の改善や公共事業の促進,教育と文化の奨励などの仕事にあたるほか,法律により一定の範囲における警察権や裁判権の行使も認められている。一方カースト・パンチャーヤットは数ヵ村,広くは100ヵ村以上にまたがる同一カーストを単位として構成される自治機関で,その機能は,結婚や食事,職業などに関するカースト規制を取り締まりカーストの団結向上を図るほか,結婚問題から土地,金の貸し借りにいたるまでのカースト内,あるいは他カーストとの間のさまざまな紛争を解決することにある。これら二つのパンチャーヤットの歴史的関係については必ずしも明らかではないが,村の支配カーストのカースト・パンチャーヤットを村落パンチャーヤットの原形とする説もある。
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山川 世界史小辞典 改訂新版 「パンチャーヤット」の解説

パンチャーヤット
pañchāyat

インドに古くから存続した村落やカースト集会。「五人会議」を意味し,5世紀にその原型の存在が確かめられる。地方の自治的機関として社会秩序と慣習を維持し,成員を保護する役割を果たしたが,同時に国家の地方支配体制の一翼を担った。イギリス植民地時代にもこれは利用され,法規制もつくられた。インド独立後は新しい法律のもとで村落パンチャーヤットの組織が改編され,村落の行政をつかさどることになった。

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世界大百科事典(旧版)内のパンチャーヤットの言及

【インド】より

…(4)同じカーストの成員は宗教儀式,食事をはじめとして慣習を共通にしており,食事をいっしょに食べることができる間がらであって,生活を相互に規律している。この規律を維持する自治的機関はパンチャーヤットとよばれる。とくに成員が共同して彼らの権益を主張し,あるいはそれを擁護する必要のある中層と下層のカーストの間では,パンチャーヤットの活動は顕著である。…

【カースト】より

…(4)自治機能 各カーストには,以上の結婚,食事,職業に関する諸慣行を含む独自の慣行が掟(おきて)として存在している。そして,それらの掟に違反した仲間に対しては,長老会議(カースト・パンチャーヤット)や成員の集会(サバー)によって,罰金支払を含むさまざまな制裁が加えられた。制裁の方法として,しばしば採用されるものにカースト外への追放がある。…

※「パンチャーヤット」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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