最近の主流な考え方では,ヒト科は,全ての人類(現生のヒトとそれに近縁な絶滅人類種,すなわち猿人+原人+旧人+新人)および現生アフリカ大型類人猿を含む分類群で,ヒト亜科Homininae/hominine(ヒトとチンパンジーを含む)とゴリラ亜科Gorillinaeによって構成され,オランウータン科Ponginaeおよびテナガザル科Hilobatidaeとともにヒト上科Hominoidea/hominoidを構成するとされる。以前の主流な考えでは,ヒト科は,全ての人類を含む分類群で,オランウータン科Pongidae(ショウジョウ科ともいわれ,大型類人猿のことで,オランウータン,チンパンジー,ゴリラを含む)およびテナガザル科とともにヒト上科を構成するとされる。これ以外にも,さまざまな分類が提唱され,研究者間で合意が得られていない。その原因は,以前から,チンパンジーとの共通祖先から進化した全ての人類を含む分類群を,ヒト科(Hominidae/hominidホミニド)とするか,それより下位のヒト亜科(Homininae/hominineホミナイン)とするか,あるいはヒト族(Hominini/homininホミニン)とするかの見解が違うからである。かつては,ヒトを特別視して,すべての人類を上位の分類群として類人猿から独立させていたが,最近では,遺伝学的な近縁性に基づき,できるだけ下位の分類群として扱う傾向がある。ここでは,最近の傾向に従い,すべての人類を含む分類群をヒト族とする。ヒト族の共通特徴は直立二足歩行と犬歯の退化であり,ヒト属の特徴は長い脚による二足歩行の完成,器用に動く手指,小さな顔と歯,大きな脳,成長の長期化,道具の製作と使用である。ただし,ホモ・フロレシエンシスはこの特徴に当てはまらない。ヒト(種)の特徴は抽象的な思考能力と言語の発達であり,それらが今日の文化を築いた。なお,ヒト属に関しては,ヒトの学名であるホモを用いて,ホモ属ということが多い。
→化石人類
執筆者:馬場 悠男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
(馬場悠男 国立科学博物館人類研究部長 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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