改訂新版 世界大百科事典 「ヒラ」の意味・わかりやすい解説
ヒラ (平)
white herring
Ilisha elongata
ニシン目ニシン科の海産魚。南日本から東南アジア,インド洋の沿岸域に生息する。体は名のとおり著しく側扁し,背面は直線状,腹面は半月形をなす。顔は小さく眼は大きい。下あごは上あごより突き出て口は上向きである。体長はふつう30~40cm,ときに50cmに達するものもある。体色は銀白色で,ひれは黄みを帯びる。しりびれ基底長が長く,腹びれは小さく背びれより前のほうにある。喉部(こうぶ)から腹面にかけて,コノシロ,サッパなどと同じような鋸歯状の稜鱗(りようりん)がありぎざぎざしている。体側のうろこは大きくはがれやすい。産卵期は4~6月で,河口に遡上(そじよう)して産卵する習性が朝鮮半島西岸の錦江川における調査で判明した。この河口域では,産卵群を対象とした漁業が行われ,河口から15km上流の地点で卵が採集される。卵は球形の浮遊卵で,直径2.2~2.4mmと比較的大型である。水温22~25℃で約25時間で孵化(ふか)する。中国では鰽白,魚と称し珍重する。蒸して食べるのが最良とされる。
執筆者:松下 克己
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報